普天間飛行場の移設問題をきっかけに日米関係が揺れている。政権交代で外交政策の変更はあり得るが、いたずらに関係を損ねるのは得策でない。日米両政府に信頼構築への一層の努力を促したい。
普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を協議していた日米閣僚級作業部会が当面中断され、同盟関係深化に向けた協議の開始も先送りされる見通しとなった。
きっかけは、鳩山由紀夫首相が普天間問題の年内決着を見送り、移設先として、自民党政権時代に日米が合意した米軍キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市辺野古)沿岸部以外を検討するよう岡田克也外相、北沢俊美防衛相に指示したことだ。
作業部会が中断し、同盟深化に向けた協議の開始が先送りされたからといって、日米関係が直ちに悪化するわけではない。
戦後六十年を超える歳月をかけて、敵国から「同盟」へと深化した太平洋両岸の関係は、それほど薄っぺらなものではないはずだ。
とはいえ、最近の日米関係には意思疎通や配慮の欠如から、いたずらに関係をこじらせるかのような動きが目立つ。
鳩山首相は移設先決定に当たり、日米合意、沖縄県民の意思、連立政権の維持を、いずれも重視する考えを強調している。
それは当然だとしても、日米合意履行を求める米政府側に、どれだけの説明を尽くしたのか。
鳩山首相は先月の日米首脳会談で、オバマ大統領に「トラスト・ミー(私を信頼してください)」と伝えたが、それだけでは十分とは言えない。
もし日米合意を変更するつもりなら、困難な政治状況を誠意をもって説明し、理解を得るべきだ。そうした決意もなく再会談に臨んでも、信頼を損なうだけだ。
また、一部報道によると、ルース駐日米大使は岡田、北沢両氏に対し、日米合意を履行しない鳩山政権の態度に激怒した、という。
岡田氏は大使の激怒を否定しているが、占領時代を想起させる高圧的な態度がもしあったとしたら、日本国民の嫌米感情を煽(あお)るだけであり、慎むべきだろう。
同盟関係はよく庭の草木の手入れに例えられる。日々の手入れを怠ると、問題が次々と起きるからだ。これは、たとえ外交が政治主導に転換しても変わらない。
信頼を欠いたまま、いくら「世界の中の日米同盟」とか「緊密で対等な同盟関係」と言ってみても、画餅(がべい)に帰すだけである。
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