自民党の二階俊博・前経済産業相の政策秘書が政治資金規正法違反で東京地検から略式起訴され、罰金を納めた。西松建設の巨額献金事件は、小沢一郎・民主党幹事長の公設第1秘書を被告とする裁判を残して、これで終結する。
今年3月に小沢氏の秘書を規正法違反で起訴した際、東京地検次席検事は「看過し得ない重大、悪質な事案」と異例のコメントを出した。あとは「公判で明らかにする」とだけ述べたが、西松建設側被告の公判で、検察は、同社と小沢氏側との関係を「公共工事受注を巡る金銭的癒着」と表現しており、「重大、悪質」と判断した根拠はそこにある。
報道によれば、西松建設と二階氏側との関係も、公共工事を媒介にしてかなり親密なようだ。なのに検察はなぜ二階氏の秘書を軽い処分で済ませたのか、その理由を知りたいところである。
ところが略式起訴では公判が開かれないため、二階氏側と西松建設との関係など規正法違反の周辺事情は国民には明らかにされない。
検察当局は、検察権の行使についての説明責任は公判廷で果たすものとしてきた。であれば、社会の関心を集めた、しかも政治とカネを巡る違法行為という、国民の目に実態をさらさなければならない事件は、正式起訴をして公開の法廷に持ち込むべきだったのではないか。
現在、政治とカネを巡る問題で国民が検察の捜査と処分の行方を注視するのは、言うまでもなく、鳩山由紀夫首相の資金管理団体の偽装献金問題だ。単に政治献金の出もとを偽っただけでなく、実母からの贈与を隠した、場合によっては脱税の疑いも生じる状況である。
遠からず検察は処分を決める。関係者への事情聴取など国民からみて十分な捜査を尽くしていなければ、どんな処分であっても、世論を納得させられないであろうことは指摘するまでもない。
政治とカネを巡る事件は、ほかの犯罪にもまして、公平かつ透明性のある検察権の行使が求められる。捜査だけでなく、不起訴にするか起訴するか略式で済ませるかの処分に関しても、検察は国民の視線を強く意識しておく必要がある。