B、C型肝炎ウイルスの感染者を一律に支援する「肝炎対策基本法」の成立は、肝炎対策の第一歩だ。国と自治体は連携して早期診断・治療に取り組み、肝炎の撲滅に全力を挙げてほしい。
基本法は前文で、感染拡大について「原因が解明されていなかったこと」とともに「国の責めに帰すべき事由によりもたらされた」と明記しているように、国の責任を認めている。
薬害C型肝炎訴訟は昨年一月、原告らを救済する「特別措置法」の成立で終結したが、救済対象がC型に汚染された血液製剤による感染者の中でもカルテや投薬証明書などの証拠がある場合に限られている。
ところが、国内の感染者はB型が百五十万人、C型が二百万人と推定され、わが国最大の感染症といわれている。
感染原因の多くが血液製剤の投与のほか、輸血、予防接種の際の注射器の回し打ちとみられ、一定の年齢以上の国民ならだれもが感染した可能性がある。B、C型感染が、医療行為により拡大を招いたという意味で「医原病」といわれるのはこのためである。「国の責め」を認めたのは当然だろう。
「特別措置法」で救済されなかったB、C型感染者への支援の必要性は訴訟終結のときからの課題だった。「基本法」の成立で、感染者全員への支援体制がようやく整った。
肝炎の治療法は近年、大きく進歩している。今後はその医療をだれもが受けられるようにしなければならない。
特にC型はB型よりも持続感染しやすく、七割が慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行するが、早期治療で完治も期待できるだけに、早期診断・治療の体制を早急に整える必要がある。
B、C型とも昨年度からインターフェロン(IFN)治療費の公的助成が始まり、患者の自己負担の上限が収入により月一万〜五万円に抑えられた。だが、それ以外の薬剤は助成の対象外となっており、IFN治療の効果がC型に比べて低いB型感染者では依然として経済的負担が大きい。自己負担額のさらなる引き下げや助成対象薬剤の拡大が求められる。
予防接種によるB型感染では、二〇〇六年に国を相手にした北海道の原告五人の勝訴が最高裁で確定したあと、全国の地裁で訴訟が相次いでいる。C型訴訟と同様に、国は早急に和解協議を始め、全面解決を目指すべきである。
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