自動車大手のスズキが独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携を発表した。VWがスズキ株の19.9%を取得するほか、共同で環境関連技術の開発に取り組む。
両社あわせた販売台数は世界首位のトヨタ自動車を上回る規模で、自動車産業の勢力地図を大きく塗り替える可能性がある。
背景にあるのは、米ゼネラル・モーターズ(GM)の経営危機だ。スズキは長年GMと提携関係にあったが、昨年来の世界不況で資金難に陥ったGMが手持ちのスズキ株を売却し、資本関係は解消された。
新たな後ろ盾として、登場したのが環境技術の蓄積に厚いVWだ。
両社の組み合わせは規模だけでなく、相互補完性が高く、他メーカーにとっての衝撃は大きい。両社とも世界的な自動車不況の中でも黒字を確保している、いわば「勝ち組」同士の握手である。
加えて伸び盛りの新興市場でも強固な基盤を持つ。米国を抜いて今年世界最大の自動車市場になる中国にはVWが早くから進出し、シェア首位の座を確保している。小型車に強いスズキはインドで50%近いシェアを持つガリバー的な存在だ。
トヨタやGMなど他の巨大メーカーが米国中心の販売構成であるのに対して、VW―スズキ連合は今後も新興国の成長が続くとすれば、追い風を最も受けやすい位置にいる。
課題をあげるなら、提携の果実をどう生み出すか、道筋がまだ明確ではない点だ。環境車に出遅れたスズキは、VWの技術力をうまく利用したい思いがある。
その一方で、「小さくとも自主独立」の路線を貫いてきた鈴木修会長兼社長は、VWの経営介入を好まないだろう。
こうした難しさや国際提携につきものの文化の違いをどう克服するかが、成否を分ける。
先週は三菱自動車と仏プジョーの提携が明らかになり、世界再編が加速している。1990年代末にも自動車再編の機運が盛り上がったが、当時は巨大化競争の趣があり、多くの提携が失敗に終わった。
今回の再編では、単に規模を競うのではなく、環境技術の開発加速など具体的な成果を望みたい。