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〈まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている〉の書き出しで、司馬遼太郎作「坂の上の雲」は始まる。その小さな国の開化に、琉球王国は呑(の)み込まれていった。いわゆる琉球処分で沖縄県になってから、今年で130年になる▼明治政府が琉球にこだわった大きな理由は「国防」だった。唱歌の「蛍の光」はかつて4番まであり、千島の奥も沖縄も、八洲(やしま)の内の守りなり……と歌われたそうだ。先の戦争では本土を守る「捨て石」にされ、戦争が終わると「太平洋の要石(かなめいし)」になった。基地の島である▼戦後、本土は憲法9条に守られる。しかし沖縄には異なる時間が流れてきた。朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、さらにはイラク戦争。基地を通じて戦争にかかわってきた。三つの世紀をまたぐ歴史の先に、いまの普天間飛行場問題がある▼米側との「返還」の合意からすでに13年がたつ。県内移設を突きつけられた当時の大田知事は、「この狭い沖縄の、どこにそんな場所があるのか」と憤った。島の多くの人々の思いでもあっただろう▼ラテン語の諺(ことわざ)に「平和を望むなら戦争を準備せよ」とあるそうだ。顧みれば本土は、自らの平和のために、戦後もずっと沖縄に「戦争の準備」の場であることを強いてきたのではなかったか▼「平和を望むなら平和を準備したほうがいい」。これは評論家の故・加藤周一さんが切り返した言葉である。沖縄の歴史と現実を沖縄だけのものとせず、考えを巡らせたい。考えの一つ一つが、ひいては「平和の準備」につながっていく。