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普天間問題―日米関係の危機にするな

 米海兵隊の普天間飛行場の移設問題が一段とこじれてきた。

 鳩山由紀夫首相が先週、移設問題の結論を来年に持ち越す方針を示したことが直接の発端だ。名護市辺野古への移設案に連立相手の社民党が強硬に反対したことに配慮したものだった。

 だが、その結果、首相がオバマ米大統領との間で合意した、辺野古案を検証する閣僚級の日米作業部会は宙に浮いてしまった。首脳会談で確認した来年の安保条約改定50周年に向けた「同盟深化」の協議にも入れそうにない。

 日本政府関係者によると、辺野古案以外に現実的な打開策はないとする米政府側の、先送りに対する反発が底流にある。こうした展開に、岡田克也外相でさえ「日米関係の現状に非常に強い危機感を持っている」と語る。

 なぜこの事態なのか。日米関係の基盤は安保条約であり、日本が基地を提供するのは不可欠の要件である。移設問題はその重要な一環だ。この基本認識では日米に大きな違いはあるまい。

 米側が既存の合意の実施を求めるのは、米国の立場としては当然だろう。同時に、政権交代を踏まえた鳩山政権が過去の経緯を検証し、沖縄の過重な負担を軽くするための方途を探ろうとすることも否定されるべきではない。

 問題は、同盟国間の外交らしく、在日米軍の抑止力をどう維持するのか、日本としてそのコストをどう分担するのかという観点からの率直な意思疎通がうかがわれないことだ。

 これで同盟そのものが壊れるかのような議論は短絡的に過ぎるが、コミュニケーションが不全なまま混迷が深まるのは不幸なことだ。

 オバマ大統領は東京での演説で「この半世紀、日米同盟は安全保障と繁栄の基盤であり続けた」と述べた。今必要なのは、その「基盤」を保ち、管理していくための意思と知恵である。

 いったんは年内決着を探りながら、連立への配慮を優先し、結論を先送りした鳩山政権に対する米国側のいらだちは理解できる。

 一方で朝日新聞の世論調査では、日米合意を見直して再交渉すべきだという人が半数を超えた。沖縄県民だけでなく、こうした世論の動向も軽視されるべきではない。

 防災や医療、教育などの分野で重層的な協力を広げていくという首相の「同盟深化」論は、地球温暖化対策や核不拡散の取り組みを重視するオバマ政権の方向性と一致するものだ。日本国民も、ともすれば軍事面のみが強調されがちだった従来の同盟像が刷新されることを歓迎するに違いない。

 この流れを大事に育むためにも、普天間問題をめぐるあつれきをできるだけ抑え込むことが首相の責任である。まずはどのような「方針」なのか、それを早く出してもらいたい。

二階氏秘書有罪―偽装献金を防ぐ抜本策を

 自民党幹事長代理で、麻生前政権の経済産業相を務めた二階俊博氏の政策秘書がきのう、準大手ゼネコン西松建設からの献金を個人からの献金に偽装した罪で、裁判所から罰金100万円の略式命令を受けた。

 偽装は、社員ら60人がひとり5万円ずつ個人で献金したように装う手口だった。政治資金収支報告書には、5万円以下の個人献金について寄付者名を記載する必要がないからだ。

 東京地検特捜部は、二階氏の秘書が罪を認め、悪質性を示す証拠もないので略式起訴にとどめた。公判は開かれずに事件の幕は引かれた。

 しかし、特定の業者から偽装献金を受けていた裏に何らの癒着構造がなかったのか。不透明さがこれで晴れたとはとても言えない。

 二階氏は「政治資金規正法に基づいた対応をきちんとやっている」と疑惑を否定し続けた。秘書の有罪についてきのう「誠に残念」と述べたが、自分の責任をどう考えているのだろうか。

 西松建設事件では、小沢一郎・民主党幹事長の秘書も、ダミー団体を経由した偽装献金容疑で起訴され、来週ようやく公判が始まる。

 こちらの方は無罪を主張して争う姿勢だ。起訴された違法献金も3500万円と高額で、小沢氏の公共工事受注への影響力が背景として指摘されている。

 西松建設からの献金は、小沢氏側だけでなく、二階氏ら自民党議員側にも流れていた。このため、「民主党側だけを摘発するのは不公正ではないか」との批判が検察に向けられた。

 このさなか、検察審査会が2度「起訴相当」の議決をすれば、検察が応じなくても起訴されるという重大な改正があった。このことも影響して捜査は長期化し、ようやく自民党側の立件にたどりついた。

 様々な手口で寄付者の名前を伏せる報告書の虚偽記載は、鳩山首相の偽装献金疑惑でも明らかになっている。政治資金規正法の網をくぐり抜けようとする不正は、広く政界に横行しているのではないかとの疑念が生じる。

 政治家とカネの関係をガラス張りにすることで、政治腐敗を根絶しようとするのが政治資金規正法だ。その報告書にうそを書かれれば、企業や団体からの政治献金を全面禁止にするといった改革をいくら徹底しても、抜け道を防ぐことは難しい。

 法律を空洞化させる犯罪を防ぐためには、秘書ら担当者だけを罰していても効果には限界がある。

 虚偽記載が発覚した場合に、議員本人の監督責任を問いやすくする改正案が公明党から衆議院に出されている。こうした案も含めて、国会は超党派で早急に実効性のある改革を検討しなければならない。

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