師走の空を爽(さわ)やかな新風が吹き抜けた。十八歳の若者が日本ゴルフ界の頂点に立った。その鮮烈な勢いは、同じように高みを目指す若い力を励まし、導く希望の光ともなるはずだ。
石川遼選手が男子プロゴルフツアーの賞金王となった。六日の日本シリーズ最終日で二〇〇九年の日程が終了し、十八歳の高校三年生が史上最年少で日本のゴルフの頂点に立ったのだ。
十六歳でプロとなって二年目。今季、石川選手は心技体すべてで飛躍的に伸びた。ツアーでは4勝を挙げ、獲得賞金は一億八千三百万円余に達した。十代の賞金王は初めて。まだ表情に初々しさを残す少年が、最高峰の激しい戦いを乗り越えて、ついにトップに躍り出たのである。
アマチュア時代にツアー初優勝を飾り、ハニカミ王子と呼ばれて人気者となったのは二年半前。プロ転向後は予選落ちを繰り返すなど、壁にも突き当たったが、驚異的な成長で乗り越えた。そして巻き起こした旋風でゴルフ界を一気に活気づけ、自らも早々と頂点をきわめたというわけだ。
その人気、存在感はゴルフ界、スポーツ界にとどまらない。青空へと一直線に昇っていくような勢いに励まされ、勇気づけられた人々も少なくなかろう。若き王者はまさしく日本の宝と言っていい。
ゴルフに縁のなかった女性や子どもにも「遼くん」と親しまれているのは、年齢や性別を問わず、誰をもひきつける人柄のゆえだ。信じた道を突き進む一途(いちず)さ。ひたすら努力する純真さ。どんな状況でも攻め続ける果敢な姿勢。勝っておごらず、常に上を目指す向上心。礼儀をわきまえ、いつも折り目正しく、すがすがしい立ち居振る舞いがまた、人々の心をとらえている。
考えてみれば、これらは閉塞(へいそく)感漂い、あちこちで荒廃が忍び寄りつつあるいまの社会が失いかけていることばかりではないか。「遼くん」の真っすぐな爽やかさは、それをもう一度思い出させてくれてもいるようだ。
挑戦は始まったばかりで、道は果てしなく続いている。今回の最終戦で苦戦を強いられたように、今後もしばしば試練に出合うだろう。だが、彼にはぜひこのまま真っすぐに大きくなっていってほしい。今度は世界一へと羽ばたいていってほしい。そうすればきっと、さまざまな分野でこの希望の星に続こうとする若者たちが、次々と現れるに違いないからだ。
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