HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 06 Dec 2009 01:17:17 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:「領土は逃げない。しかし、人の命は明日をも知れない」。戦後…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年12月6日

 「領土は逃げない。しかし、人の命は明日をも知れない」。戦後、旧ソ連のシベリアに長期間抑留されていた日本人全員を帰還させる決意を持って、鳩山一郎首相は一九五六年十月、モスクワに向かい、日ソ共同宣言に調印した▼抑留されたのは旧満州の関東軍兵士など約五十七万五千人。そのうち五万五千人が凍土に命を散らした。舞鶴港に千二十五人を乗せた最後の引き揚げ船「興安丸」が入ったのは、首相の訪ソから二カ月後だった▼期間に応じて最大百五十万円の特別給付金を抑留経験者に支払う特別措置法案の臨時国会提出が見送られた。「鳩山隠し」で迷走した国会運営の犠牲ともいえるだろう。同じ議員立法の肝炎対策基本法案と原爆症救済法案は可決されたのに取り残された▼一昨日、国会に集まった元抑留者からは「老兵は誇り高く去ることができる」と通常国会での早期成立を期待する声もあったが、「あの世に行ってから結果が出ても、死んだ仲間に報告できない」という意見も漏れた▼平均年齢は八十七歳。全国抑留者補償協議会の寺内良雄前会長も昨年亡くなった。成立が遅れるほど約八万人と推定されている生存者は減っていく▼祖父の遺志を継いだ鳩山由紀夫首相は野党時代から、この法案に尽力してきた。自らの偽装献金問題が、その妨げになったことをどう考えているのか聞いてみたい。

 

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