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社説2 誤発注判決が問う東証の責任(12/5)

 みずほ証券がジェイコム(現ジェイコムホールディングス)株の誤発注に関連して、東京証券取引所に約415億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は4日、東証に約107億1200万円の支払いを命じた。金額の多寡は別にして、東証に対し、より重い責任を求めた判決は妥当といえる。

 みずほは2005年12月8日に新規上場したジェイコム株の売り注文を出す際、「61万円で1株」を「1円で61万株」と誤った。誤発注に気づいて注文を取り消そうとしたが、東証のシステム不備で受け付けられなかったため、みずほに400億円超の損失が発生した。

 みずほは裁判のなかで、東証に注文の取り消しや、売買を止める義務があったと主張した。一方の東証は、自社の義務は証券会社への売買システムの提供であると反論した。

 判決は、誤発注を出したみずほの過失も指摘しつつ、市場の混乱を回避する努力を怠った東証の過失を重くみた。売買停止を「証券取引所に課せられた義務の一つ」としたうえで、売買を止めなかったことを「故意があったわけではないが、これにほとんど近い」と認定した。

 東証はもともと、証券会社の会員組織だった。両者のあいだの権利・義務は必ずしも明示的でなく、01年に東証が株式会社になった後も、もたれ合いの関係が残った。誤発注の判決は東証と証券会社の双方に、権利と義務を明確にした近代的な市場取引を求めている、といえよう。

 東証は来年1月から株式売買の処理速度を高めた、新システムを稼働させる。東証の斉藤惇社長は判決後の記者会見で、「新システムは(誤発注による市場混乱が)発生しないプログラムを入れている」と語った。

 しかし、IT(情報技術)に無欠はない。不測の事態が起きたとき、市場の混乱を最小限に食い止める最後のとりでは、人間だ。ジェイコム株の誤発注では、混乱に乗じた過度に投機的な売買も誘発された。違法ではないが、人の不幸に付け込むような投機も見たくはない。

 日本経済の先行きは不透明で、株式相場も不安定だ。そんな今だからこそ、東証はITの面から市場の安定に万全を尽くしてほしい。

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