HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 59389 Content-Type: text/html ETag: "39653d-1623-bb2b1380" Expires: Fri, 04 Dec 2009 00:21:09 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 04 Dec 2009 00:21:09 GMT Connection: close ビラ配り有罪 摘発はあくまでも限定的に : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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ビラ配り有罪 摘発はあくまでも限定的に(12月4日付・読売社説)

 無断でマンション内に立ち入り、ビラを配った罪を見過ごすことはできない。最高裁がこう判断したのは、ビラ配布を禁じる住民の意思を重くみた結果である。

 共産党関連のビラをマンションの各戸のドアポストに投函(とうかん)し、住居侵入罪に問われた僧侶の有罪が確定する。最高裁が罰金5万円を命じた高裁判決を支持し、被告の上告を棄却したためだ。

 オートロック式ではないこのマンションの玄関ホールには、「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます」などと書いた管理組合の張り紙があった。被告もそれを認識していた。

 最高裁は、こうした事実を認定し、被告の行為について、「管理組合の管理権を侵害するだけでなく、住民の私生活の平穏を侵害するもの」と結論付けた。

 被告が玄関ホールの集合ポストに投函せず、各階の廊下にまで立ち入ったことも重視した。

 プライバシー保護や防犯意識の高まりから、見知らぬ人が集合住宅に出入りすることに不安を覚える住民は少なくない。最高裁の判断は、最近の社会状況や住民の意識を考慮したものだろう。

 被告側は「配布行為を処罰するのは、表現の自由を保障した憲法に違反する」と主張した。これに対し、最高裁は「たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、他人の権利を不当に害することは許されない」とした。

 過去の判例に沿った妥当な判断といえる。

 ただ、「ビラ・チラシ禁止」などと表示した集合住宅での配布行為に、広く刑事罰を科すというのは、現実的ではない。

 最高裁は昨年、自衛隊官舎にイラク派遣反対のビラを配った市民団体のメンバーにも有罪の判断を示した。このケースでは、官舎側は警察に被害届を出していた。

 今回の事件では、マンション住民の一人がビラ配布中の被告に抗議し、110番通報した。

 警察には、住民と軋轢(あつれき)が生じた場合に限り摘発するという慎重な姿勢が強く求められる。

 今回の事件で、被告は23日間も身柄を拘束された。こんな行き過ぎた対応は、捜査当局への不信感を増幅させる。

 マンションなどのポストに投げ込まれるビラやチラシには、食事の出前メニューなど、時として生活に役立つ情報もあるだろう。

 配る側にも、住民に不安や不快感を与えないよう節度ある配布の仕方が求められる。

2009年12月4日01時45分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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