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12月4日付 編集手帳

 1万円札を1枚刷るのにかかる費用は17円ほどという。取材したのは十数年前だが、現在もそう変わってはいまい。いわば紙切れが紙幣としての価値をもつのは、政府に寄せる信頼があればこそである◆〈一ひらの紙の黄金に代れるも誠ある世のしるしなりけり 林信立〉(石井研堂「明治事物起原」より)。明治政府の財務官僚が詠んだ歌にある「誠」とは、発行する政府と国民の間に成り立つ信頼関係のことだろう◆北朝鮮が抜き打ちでデノミネーション(通貨単位の切り下げ)を実施した。旧100ウォンは新1ウォンと交換される◆1人あたりの交換額は制限され、「タンス預金」の多くは紙くずになる。インフレ抑止と不正蓄財のあぶり出しが狙いというが、生活防衛の“虎の子”を強奪された国民が政府に信頼の「誠」を寄せるはずもない。デノミ実施後も北朝鮮ウォンの威信が回復することはないだろう◆無慈悲な為政者の手にかかれば、通貨政策も人々を搾る「締め木」になる。食料や医薬品の確保に充てられるべき金は弾道ミサイルに姿を変えている。国家に名を借りた拷問部屋が、海を隔ててそこにある。

2009年12月4日01時52分  読売新聞)
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