キレる子供が急増しているようだ。文部科学省の調査では、昨年度に児童生徒が起こした暴力行為の件数は過去最多だった。子供だけの問題ではない。社会から暴力を見過ごす風潮をなくしたい。
教師を突き飛ばしたり、友人を殴る。いすで校舎の窓ガラスを割る。児童や生徒によるそんな暴力行為の件数は二〇〇八年度、約六万件と、三年連続で増加した。
前年度に比べ、高校での件数は減ったものの、小学校は24%増、中学校は16%増と、低年齢化の傾向にあるようだ。
暴力行為のうち被害者が病院で治療したのは「対教師」で22%、「生徒間暴力」で26%だった。
先月には沖縄県うるま市で同級生八人から殴るなどの暴行を受けて、中学二年の男子生徒が死亡する集団暴行致死事件が起きた。暴力行為は件数が増えているだけでなく、その内容もエスカレートしている気がしてならない。
増えている原因について文科省による各教育委員会への聞き取りでは「感情をコントロールできない」「規範意識が低下した」「コミュニケーション能力の不足」といった分析が挙がったという。
携帯電話やパソコンが普及し、相手と面と向かって話す機会が減った一方、遊びの主流にゲームが居座り、ボタン一つで相手を倒せる仮想世界が広がっている。
人との付き合い方が苦手となってキレやすい子供が増えたと言うのはたやすい。加えて、さまざまなストレスがあるにちがいない。
子供に限らず、大人も同じ状況にあり、暴力を見過ごす風潮が広がってはいないだろうか。電車内で肩が触れた程度で口論したり、コンビニやファストフード店で店員が少しばかり対応が遅れるとすぐに声を荒らげる大人がいる。
子供の親たちは一九八〇年代の「荒れる学校」で過ごした人が少なくない。家庭で暴力行為を容認する言動があってはならない。
学校は毅然(きぜん)とした指導が求められる。兆候に気づいていながら、見て見ぬふりはしていないか。
この調査では「いじめ認知件数」は前年度より16%も減った。巧妙化し、把握が困難になっているから、実態を示す数字ではなかろう。
沖縄の事件では、被害者の保護者から学校に「交友関係で悩んでいる」との相談が数回あったという。初期の段階で対応を怠ると、取り返しの付かない事態に陥りうる。先生も、子供とのコミュニケーション能力が問われている。
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