三菱自動車と仏自動車大手のプジョーシトロエングループが資本提携することになった。プジョーが三菱自に2000億〜3000億円を出資し、議決権の3〜5割を握る方向で最終調整中という。
世界の自動車産業は昨年秋のリーマン・ショック以降、米ゼネラル・モーターズが法的整理に追い込まれるなど激変が続いている。各社は新車市場の落ち込みに対応してリストラを加速する一方で、二酸化炭素(CO2)の排出の少ないエコカーの開発を迫られている。
三菱―プジョー提携の柱のひとつも環境分野の強化にある。三菱自がいち早く商品化した電気自動車の「アイ・ミーブ」にプジョーが注目し、新たな電気自動車の共同開発などに取り組む構想だ。
三菱自はリコール隠しなどの不祥事を契機として2004年に経営危機に陥り、三菱商事などの支援でかろうじて破綻を回避した。現時点で経営は安定しているものの、単独での事業展開には限界があった。
厳しい台所事情のなかでも電気自動車への投資を続けたのが、今回の提携の呼び水となった。仮に電気自動車がなければ、三菱自の生き残りは難しかったかもしれない。環境技術の有無が企業の命運を大きく左右した事例といえる。
自動車だけではない。電機業界ではパナソニックが三洋電機にTOB(株式公開買い付け)を実施し、子会社化する。この背景にあるのも環境技術だ。
三洋は長らく経営不振に苦しんできたが、電気自動車などのエコカーに搭載されるリチウムイオン電池や太陽電池の技術の蓄積には光るモノがあった。
そこをパナソニックが評価し、買収に乗り出した。三洋についても環境技術がなければ、事業部門ごとのばら売りのような厳しい道をたどっていた可能性がある。
温暖化ガスの排出抑制は、一企業や一業界にとどまらない産業横断的な課題で、環境技術の重要性は増すばかりだ。素材産業などを含めて、今後も環境を軸にしたM&A(合併・買収)や提携が相次ぐだろう。環境で後れを取れば、業界再編でも後れを取るのが産業界の現実である。