「ちゃぶ台返し」というのを一度やってみたいものだが、なかなかできずにいる。昔風のちゃぶ台があったとしても威勢よく卓をひっくり返した後の皿小鉢はどうする。ぶちまけた味噌(みそ)汁はどうなる。などと考えれば挙に及びかねよう。
▼ところがドラマのなかでは日常茶飯事だ。「巨人の星」の父一徹はその元祖のようだし、「寺内貫太郎一家」では小林亜星さんが毎回ちゃぶ台をけり上げていた。最近では映画にもなったマンガ「自虐の詩」の主人公イサオが何かというと「でぇーい」とやる。みなさん、後片づけなど知ったことかと元気がよい。
▼そんなふうには見えないのだが、鳩山首相もお仲間だろうか。ガソリン税などの暫定税率廃止と同時に環境税を設けようと話が進み始めていたのに、不意にひっくり返した。毅然(きぜん)として立ち向かうならまだしも、鳩山さんの場合はグズグズ、モゴモゴしながらの静かなるちゃぶ台返しだ。かつてないタイプである。
▼ようやく食膳がととのってきた、というところでひっくり返してしまうのがこの政権の質(たち)かもしれない。普天間問題でも社民党の福島さんが連立離脱をほのめかしたりして収拾がつかず、年内決着断念だという。あっちでもでぇーい。こっちでもでぇーい。無残に飛び散るあの案この策を誰も片付けようとしない。