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元局長証言 「沖縄密約ない」は崩れ去った(12月3日付・読売社説)

 「密約」の文書に署名した――と、日本側の当事者が法廷で証言したことで、「密約は存在しない」としてきた従来の政府見解は、完全に崩れ去ったといえるだろう。

 1972年の沖縄返還を巡る対米交渉の責任者だった元外務省アメリカ局長の吉野文六氏が、東京地裁での情報公開訴訟に証人として出廷し、日米間に密約があったことを明言した。

 吉野氏はこれまでも、報道機関に密約の存在を語っていた。だが、公開の法廷で証言したことは、より重い意味を持つといえる。

 訴訟は、密約の存在を示す文書の漏えいに関与したとして有罪となった元毎日新聞記者の西山太吉氏らが起こした。情報公開請求で、密約関連の文書が不開示とされたため、国に不開示決定の取り消しなどを求めている。

 米軍用地の原状回復補償費400万ドルと米短波放送中継局の国外移転費1600万ドル。吉野氏は、これらを日本側が肩代わり負担すると極秘裏に米側と合意したと証言した。

 吉野氏は72年、西山氏の公判では、密約を否定する証言をした。今回の証言後、吉野氏は「過去の真実を追求することが、日本の将来のために有益と信じるようになった」と語った。

 前回の証言から37年が経過している。「真実」を明らかにしても、対米関係などに支障は生じないとの判断もあったのだろう。

 2000年以降、密約を裏付ける公文書が米国で公開された。日本政府が「外交秘密」として保護する理由はなくなっている。

 岡田外相の意向で外務省の有識者委員会が、今回の沖縄返還関連を含めた四つの「密約」を対象に調査・分析作業を進めている。

 鳩山首相は、吉野氏の証言を受け、「事実関係を確認できた暁には、国民にしかるべき手段でお知らせしたい」と語った。来月にまとまる予定の有識者委員会の報告書を踏まえて、政府としての見解を示してもらいたい。

 外交では、相手との信頼関係の保持や、第三国に知られて国益を損なわないようにするため、合意内容を公にしないことがある。政府は今回の密約を結んだ事情についても説明する必要があろう。

 米国では外交文書について、25年が経過すると原則的に秘密指定を解除する制度がある。日本では一定期間後、外務省が文書公開の是非を判断しているが、外務省任せにせず、一定のルールの下での公開を促進していくべきだ。

2009年12月3日00時36分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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