HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 01 Dec 2009 20:16:25 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ビラ配布有罪 表現の自由が縮こまる:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

ビラ配布有罪 表現の自由が縮こまる

2009年12月1日

 政党ビラを配布し、住居侵入罪に問われた僧侶に有罪が確定する。いわゆる左翼や政府批判の言論が取り締まりを受けている印象がぬぐえない。モノを言う自由が縮こまらないか懸念する。

 確かに僧侶は二〇〇四年、無断でマンション内に立ち入った。東京都葛飾区にあるマンションの玄関ホールには、チラシやビラ配布のために立ち入ることを禁じた張り紙があった。

 問題は表現の自由との兼ね合いであろう。僧侶が配っていたのは、共産党の都議会報告や区議団だよりなどだった。一審は「ビラ配布のため短時間立ち入る行為を処罰する社会通念は確立されていない」とし、無罪判決だった。

 二審は罰金五万円の有罪へと逆転した。最高裁も「思想を発表する手段であっても、他人の権利を不要に害することは許されない」とし、僧侶の上告を棄却した。

 生活の平穏を願う住民の気持ちは理解できるし、尊重されねばならない。防犯などへの意識が高まる中で、部外者が無制限にマンション内に立ち入ることは許されないのは当然だろう。

 それにしても、だ。この僧侶は住民の一一〇番通報で逮捕されてから、二十三日間も身柄を拘束されていた。しかも、僧侶によれば、ビラ配布は四十年以上も続けていたが、これまで苦情を言われたことはなかったという。それほど悪質な犯罪なのか、疑問を覚える人もいるだろう。

 宅配食品や不動産など、商業ビラがポストに投函(とうかん)されているのは日常的だ。これら生活に有用な商業ビラの配布も犯罪にあたるのか。そんな疑問もよぎる。

 さらにこの事件は、議会報告というビラの内容を考えると、言論の自由に影を落としてもいよう。これまで、「イラク派遣反対」のビラ配布で市民団体の有罪が確定しているし、社会保険庁や厚生労働省の職員が共産党機関紙を配布したとして、国家公務員法違反で有罪判決が言い渡されている。

 まるで、「左翼」と呼ばれる人々らが、警察当局に“狙い撃ち”されている印象さえある。この問題について、日弁連は人権擁護大会で「市民の表現の自由の保障に対する重大な危機」と指摘した。国連の国際人権規約委員会からも「懸念」が表明されている。これを重視したい。

 ビラは言論の一手段だ。“微罪”でも有罪が積み重なると、モノを言うのも息苦しくなる。

 

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