HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60961 Content-Type: text/html ETag: "391d2a-1dc1-b9eab800" Expires: Tue, 01 Dec 2009 03:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 01 Dec 2009 03:21:05 GMT Connection: close デフレ危機 政策総動員で景気の悪化防げ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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デフレ危機 政策総動員で景気の悪化防げ(12月1日付・読売社説)

 デフレによる物価下落は、不況で給料の減ったサラリーマンや、年金暮らしの人にとっては「恵みの雨」だろう。

 だが、デフレは経済を冷やし、衰退させる恐ろしい難病だ。軽視するのは危険である。

 ◆格安チキンで節約ランチ◆

 「カップめん+チキン」

 コンビニで最近、こんな節約メニューの昼食を選ぶサラリーマンが増えている。

 東京・大崎駅前にあるローソンゲートシティ大崎店の昼時は、サラリーマンやOLでにぎわう。確かに、時間とカネの節約からか、男性にはカップラーメン派が少なくない。

 でも、カップめんだけではさすがにわびしい。ほとんどの人が「あと1品」を買う。そのヒット商品が、今春発売したフライドチキンの新製品「Lチキ」だ。

 約100グラムと従来品とほぼ同じ量で、値段を168円から128円へ下げた。小林亮介店長(26)によると、安くて食べ応えがあると評判で、「以前の1・5倍から2倍も売れている」という。

 値下げできたのは、安いブラジル産鶏肉が大量に出回り、国産も含め値崩れが起きたためだ。昨年来の世界不況でブラジルの得意先だった欧米の需要が減り、格安の鶏肉が日本に流入した。

 こうして、コンビニに安いフライドチキンが並び、ライバルの弁当チェーンも300円前後のから揚げ弁当で安さを競う。

 10月の消費者物価指数は前年同月比2・2%下落し、大幅なマイナスが続いている。必需品のため、下がりにくいとされる食料も、5か月連続で前年を下回る。

 消費者にとってうれしい「食のデフレ」だが、かつてない逆風に苦しむ人たちもいる。

 ◆中小企業を襲う価格競争◆

 東京・板橋の鶏肉販売会社「鳥新」の磯田孝義社長(74)は「このブラジル産は、去年のほぼ半値に落ちた」と嘆く。

 扱う輸入鶏肉の9割はブラジル産。大手が安売り攻勢を仕掛け、取引先からは「悪いけど1円でも安いところで買う」と言われる。販売単価の下落で業務用を中心に売上高が減った。

 需要期の年末を控えた11月も価格は回復せず、売り上げは前年の7割程度に低迷している。磯田社長は「50年商売して、こんな不振は初めて」と、頭を抱える。

 「節約需要」を取り込むための価格競争は、激化の一途だ。

 スーパーなどで、割安なプライベートブランド(PB)商品が増えた。350ミリ・リットル缶入りで30円を切るPBのコーラやお茶を売る量販店もある。

 「衣のデフレ」もすさまじい。格安ジーンズの値段は、イオンとダイエーが880円、西友850円、ドン・キホーテ690円とどんどん下がった。

 あるOLは「デパートは試着まで。買うのは安いネット通販で」と家計防衛作戦を披露する。

 百貨店は10月まで20か月連続で売上高が減り、中でも衣料品の落ち込みが激しい。失地回復を狙って1万円を切る紳士スーツを売る百貨店も出てきた。

 大手ならある程度、値下げ競争に耐えられるが、中小企業は窮地に追い込まれやすい。

 商工中金の調査によると、中小企業の10月の景況判断指数が9か月ぶりに低下に転じて、業績回復の足踏みが裏付けられた。主因は、販売価格の下落による売り上げ減少だ。中小企業のリストラ加速は避けられそうにない。

 労働者の8割が働く中小企業で雇用や給与のカットが広がれば、消費は打撃を受ける。その需要不足が価格を押し下げ、さらに景気悪化が加速する「デフレスパイラル」の危険が高まりかねない。

 こうした中、政府は再びデフレを宣言した。消費などの需要が40兆円も足りないためだ。

 ◆政府と日銀は協調せよ◆

 ところが、鳩山内閣は公共事業の一部を凍結しており、来年にかけて需要不足が景気を底割れさせるとの懸念が広がる。

 内需刺激策として子ども手当や高速道路無料化を掲げているが、即効性や持続性に疑問がある。

 先週のような急激な円高と株価下落もデフレ圧力となる。鳩山首相は29日、関係閣僚と緊急協議し、第2次補正予算に円高・株安対策を盛り込むよう指示した。

 日銀の白川総裁も30日、「デフレ克服のために最大限の努力を行う」と述べ、遅ればせながらデフレを認めた。政府・日銀が協調して、政策を総動員する態勢がようやく整ってきた。総合的なデフレ対策を急がねばならない。

2009年12月1日00時58分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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