臨時国会の会期延長は四日間の小幅にとどまり、党首討論開催は困難になった。鳩山由紀夫首相は自身の献金問題で説明を尽くしたとは言えない。小幅延長は、疑惑隠しのためではないのか。
政権交代後初の本格的な論戦の舞台となる臨時国会に、国民の多くは政治家同士の堂々とした論戦を期待したに違いない。しかし、鳩山首相や民主党執行部にそうした思いは届かなかったようだ。
会期延長を四日間にとどめたのは、「円高、デフレなど経済(状況)は緊急性を帯びている。一日も早く国会を終え、予算編成の論議に入りたい」(山岡賢次民主党国対委員長)からだという。
閣僚らを、二〇〇九年度第二次補正予算や一〇年度予算の編成作業に専念させたいという理屈は分からなくもない。
しかし、自民党政権時代は十二月中も国会を開きながら、予算編成を行っていた。予算編成も官僚依存から政治主導への転換で時間を要するとはいえ、予算編成は国会を閉じる理由にはならない。
経済が重要だというなら、むしろ国会での議論を通じて、何が有効な対策かを見極め、野党からも理解や協力を得ることが必要だ。与野党の結束した姿が、対策推進の力となり、経済危機からの早期脱却に資するのではないか。
小幅延長にとどめたことで、鳩山首相と谷垣禎一自民党総裁との党首討論開催も困難になった。
民主党は国会から官僚答弁を排し、国民代表の国会議員による論戦の場にする、と主張してきた。その頂点が与野党党首が国の基本問題を論じ合う党首討論だ。
各党申し合わせで毎週水曜に開催することになっているが、政権交代後は一度も開かれていない。
谷垣総裁が、党首討論見送りの狙いを「鳩山首相をめぐる政治とカネの問題を隠蔽(いんぺい)するため」と指摘したように、小幅延長は、首相の献金問題追及を避けるのが真意ではないかと勘繰ってしまう。
そうした批判を不本意だと思うなら、首相は党首討論の開催要求を堂々と受ければいい。
党首討論は本会議や委員会の質疑と違い、首相側も質問できる。首相にとっても、自民党政権時代の「失政」として「対米追随」外交や巨額財政赤字などをただすことはメリットになるはずだ。
党首討論は水曜午後の一時間弱。やりくりできない時間ではない。首相や民主党執行部には、開催に向けて再考を促したい。
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