小所帯ではあるがマンション管理組合の理事長を務めていると、さまざまな難題がふりかかる。悩ましいのがポストのチラシだ。ピザやすしの宅配から住宅販売…。気が付くと山になっている▼居住者以外の立ち入りを嫌がる住民からは、防犯カメラの設置を求める声があるが予算上難しい。「防犯カメラ作動中」というステッカーを張り、お茶を濁しているのが現状だ▼共産党のビラを配るためにマンションに立ち入ったとして、住居侵入罪に問われた僧侶荒川庸生被告(62)の上告審判決で、最高裁第二小法廷は「私生活の平穏を侵害するものだと言わざるを得ない」として上告を棄却した。一審は無罪だったが、罰金五万円とした東京高裁判決が確定する▼現行犯逮捕されたのは二〇〇四年の年の瀬だ。元日をはさんで二十三日間も拘置され、十数人の警察官によって自宅を捜索された▼一九九五年のオウム事件後、都市住民のセキュリティー意識は強まった。地域を巡回する自主パトロール隊が各地で発足しているのもその表れだろう。それにしても恣意(しい)的な捜査と言われても仕方ないのではないか▼宅配ピザのチラシを配って起訴されたという話は聞いたことがない。荒川住職の行為は長期間拘置されるほど悪質だったのか。こんな素朴な疑問に補足意見などで答えようとした最高裁判事は、残念ながらいなかった。