HTTP/1.0 200 OK Age: 1 Accept-Ranges: bytes Date: Tue, 01 Dec 2009 00:41:15 GMT Content-Length: 7633 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.3 Last-Modified: Mon, 30 Nov 2009 14:18:20 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(12/1)

 最先端の技術を極めた製品には、鋭い美しさがある。時を経た古い工業品には、生き物に似たぬくもりがある。近ごろ増えたハイブリッド車は未来社会を予感させる流線型。街中から姿を消した往年の名車は、凸凹した容姿が愛らしい。

▼先週末、東京・神宮外苑に81台のクラシックカーが集まった。とりわけ目を引いたのが、1950年代のドイツ製の超小型車である。とぼけたカエルのような顔に、胸がキュンとなった方もいるのではないか。長さ約2メートルで、両腕で抱きつけるほどの大きさ。その質素ないずまいが、エコ時代の都会人の心に響く。

▼乗用車というより、風防つきスクーターと呼ぶ方が正確かもしれない。戦後復興期のドイツではメッサーシュミットなど航空機会社が、競って小さく安い車を開発した。ジェット戦闘機をつくる高い技術力があるのに、飛行機の生産を禁じられたためだ。そんな窮余の策の製品が、世界の市場に瞬く間に広がった。

▼ハイテクからローテクへの転向に、ドイツの技術陣は苦い思いもしただろう。では今の日本企業はどうか。世界中で韓国車が健闘し、広大なインドでは、タタ自動車の約20万円の車が大当たりした。安かろう悪かろうと見下している場合ではない。新興国の新車は、どこかクラシックカーに似た簡素な風情がある。

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