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古代ギリシャの七賢のひとりタレスは、何が一番難しいかと問われて「自分を知ること」と言ったそうだ。では容易なことは?と聞かれ、「他人に忠告すること」と答えたという▼そんな話を、しばらく前の声欄を読んで思い出した。投書した人は、職探しに通うハローワークの相談窓口で、小型の色紙を目にしたそうだ。そこには「人間関係うまくいかないのが当たり前」「転ばない生き方より転んでも起きあがる人生がいい」と書いてあった▼仕事を失った人を励ますつもりだったのだろう。しかし投書者は、落ち込んでいる気持ちを逆なでする、と立腹していた。紋切り型の人生訓である。古人の言うように、示すのは簡単でも、意図した通りに人を勇気づけるのは難しいようだ▼きのう、17都道府県のハローワークで「ワンストップ・サービス」の試行があった。求職だけでなく、縦割りだった様々な支援を一つの窓口にまとめて応じる失業者対策の目玉である。昨冬のような「年越し派遣村」を再現させまいと、政府が取り組んでいる▼タレスに相通じる、詩人の吉野弘さんの一節を思い浮かべる。〈他人を励ますのは、気楽です/自分を励ますのが、大変なんです〉。自分を励ますことのできる灯を、人の心身にともしたとき、初めて政策に血が通うことになろう▼きょうから暦は師走。12月の異名は、聞くだけで風の寒さをつのらせ、せわしなさを倍にする。デフレに円高、株安が追い打ちをかける年の瀬、貧乏神を長逗留(ながとうりゅう)させない政府の力量が試されるときでもある。