七日からコペンハーゲンで開かれる気候変動枠組み条約第十五回締約国会議(COP15)を前に、米国と中国が相次いで温室効果ガスの中期削減目標を打ち出した。小さな芽。だが大切に育てたい。
COP15最大の焦点とされる、二〇二〇年までの温室効果ガス中期削減目標について、米国は「〇五年比17%」の削減案を、オバマ大統領自らがコペンハーゲンで表明する方針を打ち出した。
米国では、17%削減を柱とする温暖化対策法案が六月に下院を通過した。が、20%削減をうたう上院の法案審議が来春にずれ込む見通しで、COP15での数値目標表明も、危ういとみられていた。
米国を抜いて世界最大の排出国になった中国が、間髪を入れず発表したのが、二〇年までに、国内総生産(GDP)当たりの排出量を〇五年比40〜45%削減する独自の行動目標だ。
米国が示した数値は、一九九〇年比に換算すると3%程度になり、「25%削減」を表明した日本や欧州連合(EU)には遠く及ばない。中国の場合、経済成長が続けばGDPも膨らんで、排出量は今の二倍に増える試算もある。だが、京都議定書の削減義務を拒んだ米国と、先進国の責任を問い続けてきた中国。世界の排出量の四割を占める両大国が「自国の義務」を掲げた意義は大きい。
史上初めて首脳級の会議になるCOP15では、京都議定書に続く法的な削減義務の採択を断念し、とりあえず政治合意をめざす。両国の“前向き”な表明が、追い風になるのは間違いない。
温暖化の大きな被害を避けるため、現在の科学が要求するのは、温度上昇を産業革命前のプラス二度内に抑えることだ。それには世界全体で九〇年比25〜40%の削減が必要で、両大国の“上積み”に地球の前途がかかっている。
国際交渉に駆け引きはつきものという。しかし、温暖化対策は勝ち負けではないはずだ。世界がいかに協調し、共通の危機を回避するかの問題だ。科学の要求に従う限り、日本が掲げる25%も結局は、だれもがいつかは、達成すべき数値である。
日本には、その目標を堅持し、COP15のもう一つの焦点である途上国への対策資金、技術移転の具体的なメカニズムを提示し、動き始めた両大国の背中を強く押してほしい。そして、この会議の成功と、新議定書採択への道を開いてもらいたい。
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