「武蔵」「大和」といえば、戦艦を連想する人が多いだろうが、明治初期まで使われた旧国名である。多くが現在の県名よりも風雅に響く。異論もあろうが、例えば千葉よりも「安房」、福井よりも「若狭」がずっとゆかしく、美しい。
▼なかでも「美作(みまさか)」には文字通り美しく、まろやかな響きがある。いまの岡山県北東部。甘酒を意味する「うまさけ」、中国山脈のなかにあるから「御坂(みさか)」など、語源は諸説あるらしい。鳥取県境に近い岡山県新庄村は人口約1000人。この村で甘酒を味わった。美作には確かに「うまさけ」がある。そう思った。
▼2週間ほど前、この村で「日本再発見塾」が開かれた。全国から集まった約120人が宿場の街並みを歩き、森に入り、地元の食を楽しんだ。村民の4割がもてなしに参加し、来訪者、村民の双方が村のすばらしさを再発見した。この催しは、2005年8月に岩手県葛巻町で始まり、5回を数えるようになった。
▼仕掛け人のひとりは鳩山政権の事業仕分けにもかかわる加藤秀樹さん。事業仕分けも、再発見塾も、日本を元気にしようとする試みだ。鳩山由紀夫首相の曽祖父で衆院議長になった鳩山和夫は、美作勝山藩士だった。いつかはわからぬが、首相にも「帰りなんいざ」の時が来る。鳩山家発祥の地は静かに冬を待つ。