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春秋(11/29)

 東京・港区のフランス大使館で、ちょっと変わった現代アートの展示会が始まった。今月初めまで実際に大使館として使っていた1950年代の建物を丸ごと転用。室内や壁を約70組のアーティストが思い思いの作品で飾っているのだ。

▼絵あり映像あり立体作品あり。階段の1つを大使館で使ったイスで埋め尽くしたのも作品だ。3階のテラスに立つと赤や黄に色づく庭の木々が目の前に広がり、都心にいることを忘れさせる。他方で、鉄格子付きの文書庫や元大使執務室の大金庫は、ここが単なる洗練されたオフィスビルではないと教えてくれる。

▼大使館の機能は敷地内の別の建物に移転済み。普通の美術館ではできない、解体を待つ建物ならではの催しとして企画したという。毎日200人を超す人々が訪れる。一般の人が大使館の奥まで見られる機会などまずない。建物目当てに来て、現代アートの面白さを知り、作家との会話を楽しんでいる人も目立つ。

▼戦前から高度成長期にできたデザインに優れた建物が、耐震性などから次々に姿を消している。元生保本社が区役所になるなど保存や活用の動きもあるが、まだ少ない。仏大使館は残念ながら姿を消す。ただ、ひっそり取り壊されるのでなく、人々の工夫で最期の一花を咲かせられたのは、まだ幸せかもしれない。

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