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核テロ防止―米国とともに動かそう

 来年4月に、核セキュリティー首脳会議が米国で開催される。核セキュリティーとは、核兵器に転用できる核分裂物質の盗難、闇市場での売買などへの対策を強化し、核テロや核拡散を防ぐ安全保障のことだ。

 話の発端は、今年4月のオバマ米大統領のプラハ演説だ。「核のない世界」を目指すと宣言するとともに、こんな懸念も表明した。

 核テロは世界の安全への差し迫った脅威である。核兵器を持てば、テロリスト1人でも大規模な破壊行為が可能である。現に国際テロ組織は、核爆弾を手にしたがっている――。

 米国では、9.11テロの後、テロ集団があらゆる手段を使ってくるとの不安が強まった。「核の闇市場」が次々に明るみに出て、核テロの脅威が現実味を増した。「核のない世界」に向けて進むためにも、核テロ対策は欠かせない。大統領は、1年以内に核管理の首脳会議を開くと宣言し、その後の調整で開催が決まった。

 今週、首脳会議に向けた準備会合が東京で開かれる。核セキュリティー強化の具体策、首脳会議で採択予定の文書などについて協議する。先の鳩山・オバマ会談後の共同声明でも、核セキュリティー対策での日米協力が強調されており、できるだけ前進させたい。

 オバマ大統領は、核テロがニューヨーク、パリ、東京などの大都市で起きれば、多くの犠牲だけでなく、国際社会や経済が混乱に陥ると心配する。核テロを現実的な脅威ととらえ、対応策を急ぐ基本認識は正しい。グローバル化時代の安定と繁栄にとって核テロ防止策が欠かせないことを、共通理解として広めていく必要がある。

 核問題というと日本では、北朝鮮の核開発や中国の戦略に耳目が集まる。それも重大な関心事だが、核テロへの米国の警戒心をもっと共有すべきだろう。米国が懸念する脅威の削減へ、まさに同盟国として外交努力を尽くすときだ。

 核セキュリティー対策では、核物資防護、違法な輸出管理や闇組織の取り締まり強化などが柱になる。多くの場合、核を持たない途上国が新たな資金・人材投入を求められることになる。

 米国主導だと、「米国の核軍縮が先」と切り返されることが少なくない。その点、唯一の被爆国である日本が核テロに対しても徹底した防止策を、と主唱することで説得力を高められる。そうした協働作業が、鳩山首相がめざす重層的な同盟関係づくりで、重要なかぎとなる。

 準備会合には、核不拡散条約(NPT)に加盟していないインド、パキスタン、イスラエルも参加の予定だ。NPTを補完する形で、核テロ、核拡散防止への国際協力を進める絶好の機会でもある。

学力テスト―狙い定めて絞り込め

 2007年に始まった全国学力・学習状況調査について、文部科学省は来年春は全員調査をやめ、40%の抽出調査にすることを検討している。都道府県別の成績を誤差なく出すためには、その程度の数は必要だという。

 対象に選ばれなかった所も、希望すれば同じテストを利用できるようにする。その結果、多くの学校が参加することになりそうだ。これでは過去3回の調査と、あまり変わらない。

 日本の子ども全体の学力水準や傾向、弱点をつかみ、教育条件の整備に反映させることは、政府の大事な仕事だ。学校現場でどうやったら児童・生徒の学力を向上させられるか、そのための素材提供も必要である。

 だからといって、毎年、多額の予算や人手を投入し、子どもたちを一斉に試験用紙に向かわせるやり方に、どれほどの意味があるだろうか。抽出数をもっと絞り込んだ形でもよいはずだ。

 行政刷新会議の事業仕分けでも「目的や効果が不明確」として、「予算の大幅縮減」の対象と判断された。

 文科省が今後やるべきことは、狙いをはっきりさせた小規模なサンプル調査を、より多角的に組み立ててゆくことだ。

 たとえば、従来小6と中3だけを見てきたが、他学年の傾向もつかむ▽国語・算数・数学以外の教科に対象を広げ、教科間の成績の連関を調べる▽教育格差拡大の中、家庭環境と学力の関係をもっと掘り下げる――などだ。問題を公表せず、同じ設問で繰り返しテストをして、年々の学力変化をみる方法もある。

 文科省には、全員調査の形で続けてほしいという要望が、各地の教育委員会から来ているという。だが仮に地域ごとの成績を比べるとしても、数年おきの抽出調査で十分だろう。

 全国の水準を参考にしながら、一人ひとりの力を把握し、きめ細かな指導をする。地域ごとに授業改善策を編み出し、結果につながったかどうかも検証する。そうした作業は、学校現場や教委が自律的に取り組むべきことだ。文科省は物差しや処方箋(せん)を押しつけず、支援に徹すればよい。

 地域や現場の学校の権限を広げて、教える内容や結果にもきちんと責任を負ってもらうのが、鳩山政権がめざす「教育分権」の姿のはずだ。

 これまでの全国学力調査に、意味がなかったわけではない。たとえば、知識・技能を生活の中で応用する力を問うた「活用」の設問は、これからどんな学力が求められるのかを示したものだった。「大きな刺激になった」という先生たちの声を聞いた。

 3年間を検証し、文科省と教委、学校がそれぞれすべきことを考え直してほしい。そのうえで全国学力調査は思い切った方向転換をはかるべきだ。

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