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「ポスト京都」の歯車がようやく回り始めた。米国と中国が2020年までの温室効果ガス排出抑制の中期目標を相次いで発表した。
世界の排出量の約4割を占める両国が、地球温暖化防止に本気で取り組む姿勢を示したことは歓迎できる。
約1週間後に迫った国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)では、現行の京都議定書に続く脱温暖化の国際枠組みについて、中身の濃い政治合意をまとめなければならない。米中の動きが、交渉進展のきっかけになることを期待したい。
とはいえ、両国が掲げた数値は称賛するにはほど遠い。
米国が打ち出した「05年比で17%削減」は、90年比に換算すると4%程度にとどまる。議会で審議中の関連法案から逸脱するような目標は掲げにくいという国内事情を抱えているとはいえ、この数字では他の国々に納得してもらうのは難しいのではないか。
一方の中国は「国内総生産(GDP)あたりの排出量を05年比で40〜45%減らす」という。
ただ、経済が現状のまま成長し続けた場合、たとえGDPあたりの削減目標を達成できたとしても、総排出量が大幅に増えることは避けられない。
今回の両国の決断は、鳩山首相が9月に国連で「90年比で25%削減」という大胆な中期目標を掲げたことに触発されてのことでもあろう。
米中の打ち出した数値の低さのせいで日本の目標が高く見えるが、むしろその立場を強みにして、米中などへの働きかけに力を入れるべきだ。
鳩山政権は外交をフル回転させなければならない。首相をはじめ、外相、環境相らは総力を挙げ、後世の評価に堪えうる成果を生み出すべく、多角的な外交交渉を繰り広げてもらいたい。
そもそも日本の「25%削減」は、すべての主要国が意欲的な目標に合意することが前提だ。公平で実効性のある枠組みをつくるという意味でも、米中の数値を「意欲的な目標」にまで引っ張り上げる必要がある。
米国は、先進国全体の目標として求められている「20年までに90年比25〜40%削減」を見すえるべきだ。この水準でないと「先進国が50年までに80%削減」という長期的な目標の実現が難しくなり、温暖化の被害が深刻化する危険性が大きくなってしまう。
中国も、経済成長の妨げになるような削減は避けたいという事情はわかるが、大排出国として、将来的に総排出量の減少につなげられるような思い切った目標を掲げてほしい。
そういう中国の積極姿勢は、ほかの新興国の背中を押すことにもなるはずだ。世界が一丸となって排出削減に向かってこそ、「ポスト京都」の実効性は増す。
看護師や介護福祉士を目指してインドネシアから360人が来日した。もともと母国の資格を持つ人たちだ。国内で研修し、1月から現場に出る。
日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)にもとづく受け入れで、今回が2年目。計570人になるが、2年で千人という枠をかなり下回る。
同様の協定によるフィリピンからの来日も、初回の今年、上限の450人を大きく下回る280人だった。
両国とのEPAは経済関係の強化を目的に、貿易の自由化だけでなく、閉鎖的といわれる日本の労働市場に新たな扉を開けた。
ところが、せっかくの制度の利用が枠に届かないのは、受け入れ施設に負担やリスクがかかる仕組みのためだ。
来日は、受け入れる病院や高齢者施設と労働契約を結ぶことが前提だ。1人60万円かかる来日前後の研修費や仲介料は施設が負担する。滞在中の給与は日本人と同等に支払う。
看護師を目指す人は3年以内に国家試験に合格しないと、帰国しなければならない。介護福祉士の受験機会は4年で1度だけ。日本人でも合格率5割という難関だ。いずれも国家試験に合格できなければ、施設の負担も無駄に等しくなる。
看護師試験を外国人が受験するには高い日本語能力が求められるが、EPAでは条件を緩和して受験資格を与えた。そうしてまで外国人看護師を入れるなら、日本語を基礎から専門用語まで学習できる環境をつくるのが筋だ。介護福祉士も合格には十分な日本語能力がいる。
しかし、厚生労働省は日本語も国家試験対策も施設に丸投げだ。施設側は手探りで指導にあたっており、施設間の格差も大きいという。このままではほとんどの人が不合格のままで帰国し、EPAの意義が問われかねない。
来日した研修生には当面、試験問題の漢字に仮名をふったり、辞書の持ち込みを認めたりするぐらいの配慮をしてもいいのではないか。滞在期限を数年延ばすことも考えていい。
来年度からインターネットを使った日本語学習支援が始まるというが、それで十分なのか。日本の最新技術を体系的に学べるよう、研修課程の指針を厚労省は示してはどうか。
協定のある2カ国以外の人にとって環境はもっと厳しい。日本の看護師養成学校で学び試験に通っても、7年しか滞在できない。介護福祉士資格は就労ビザも出ず、「単純作業」と同じ扱いだ。
看護師や介護福祉士といったケア資格を持った人はますます必要になる。専門技術や能力を身につけた外国人を迎え入れることも大いに必要だ。扉を少し開けて後はほったらかしでは、政府の対応はあまりに無責任である。