HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 21675 Content-Type: text/html ETag: "24a3a7-54ab-20db3940" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 28 Nov 2009 14:52:10 GMT Date: Sat, 28 Nov 2009 14:52:05 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

円高ドル安―市場介入をためらうな

 デフレ不況にあえぐ日本経済に円急騰の衝撃が走った。きのうの外国為替市場で一時、1ドル=84円台まで円が買われ、95年7月以来、14年4カ月ぶりの水準となった。

 国内の輸出企業が想定する水準や、経済の実態から見れば急激すぎる。放置すれば、景気が「二番底」に陥ったり、デフレが深刻化したりする恐れが強い。政府・日銀は米国などと連携し、断固たる態度で市場の投機的な動きを封じるべきだ。

 今回の円高は、世界的なドル急落の一面である。巨額の財政出動と超金融緩和で再生を目指す米経済だが、景気が再び悪化する懸念がある。超低金利が長引くと見込まれるため、対米投資の魅力は薄れ、世界のマネーのドル離れはやみそうにない。

 そんな中、連邦準備制度理事会(FRB)が公開した金融政策決定の会議の議事録に、当局がドル安を容認していると読めるくだりが見つかり、投機的な動きに火がついた。

 さらに、中東のドバイで不動産バブル崩壊の懸念が再燃し、関係の深い欧州の金融機関の信用に影が差した。マネーはユーロからも逃げ口を求め、円相場の急騰につながった。

 円買いの思惑と投機の連鎖が起きている理由は、日本側にもある。鳩山政権が「内需主導の景気回復」という路線にこだわるあまり、「輸出支援と受け取られかねない為替介入を忌避しているのではないか」といった見方が市場関係者の間に広くある。

 「日本政府は市場に介入しない」という推測が投機を勢いづけ、異常な円高を助長した面は否定できない。この空気を変えなければならない。

 G20で合意した世界経済の回復シナリオは、為替相場の安定を暗黙の前提としていた。今、それが大きく揺らいでいる。米国はガイトナー財務長官が「強いドルは重要」と繰り返すが、本音では米国からの輸出を増やすドル安を歓迎している、と見透かされている。人民元の対ドル相場を固定している中国も同様だ。

 一方、欧州連合(EU)はこの状況に不安をつのらせ、人民元切り上げへの圧力を強めつつある。

 80年前の世界大恐慌では、各国の通貨切り下げ競争が世界経済の不毛な疲弊を招いた。その教訓を生かし、各国は財政金融政策の協調で一定の成果をあげてきたが、ここは為替相場、とくにドルの安定が重要だという強いメッセージを共同で出すべきだ。

 米国はドル急落を放置してはならないし、日米とも為替市場への介入をためらうべきではない。

 円の短期市場金利がドルより高いことも、円買いを助長している。日銀はデフレ下の円急騰という事態を直視し、金融緩和を徹底する必要がある。

日米密約―負の歴史の徹底検証を

 岡田克也外相が命じた日米密約の解明作業が最終段階に入った。外務省の内部調査は終わり、外交史の専門家らによる有識者委員会の検証を経て、来年1月中旬に報告書が公表される。

 これまでの調べで、日米安保条約改定時の核持ち込み密約を裏付ける日本側の文書が見つかった。

 米国側の情報公開や関係者の証言で密約は公然の事実となっていたのに、歴代自民党政権と外務官僚たちは存在を否定し続けてきた。そのウソが足元から崩されたのだ。

 政権交代がなければ実現しなかったに違いない。

 今回、関連文書が見つかったのは、核兵器を積んだ米艦船の日本への寄港や領海通過は事前協議が必要な核「持ち込み」に当たらないとする密約だ。

 外務省の調査結果が公表されていないため、具体的な内容や、有事の際の沖縄への核再持ち込みを認めた別の密約などがどこまで解明されているのかはわからない。

 密約の内容や交渉の経緯はもちろんのこと、どうやって隠され続けたかも含めて、内部調査に不十分な点はないかを、有識者委は第三者の目で点検し、明らかにしてもらいたい。

 長年にわたって政府が国民を欺いてきたという、民主主義の根幹にかかわる問題である。

 来年の安保改定50年に向け、両国政府が同盟の深化を議論しようという矢先でもある。外相の言う「国民の理解と信頼に基づく外交」のためにも一日も早い情報公開を望む。

 さらに有識者委に求めたいのは、密約が生まれた歴史的背景の分析だ。

 民主主義国の外交で、国民に説明できない密約は本来好ましくない。やむをえず必要な場合があっても、後年できるだけ早く、記録を公開し、歴史の検証にさらすべきだ。

 密約関連文書をめぐっては、情報公開法が施行された01年ごろ、当時の外務省幹部が破棄を指示したとされる。本当に破棄されたのかどうか、誰がそれを指示したのか、明らかにされねばならない。

 外交文書は30年たてば公開されるのが原則だが、外務省の判断で非公開になる例が多い。日米安保改定や沖縄返還、日韓国交正常化交渉などは、相手国が公開しているのに未公開のままだ。文書公開を広げるための具体的な提言も有識者委には期待したい。

 政府が正式に密約の存在を認めることになれば、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とした非核三原則との関係が問われることになる。

 鳩山由紀夫首相は9月の国連安保理首脳会合で、非核三原則の堅持を国際社会に約束した。現実的で妥当な判断である。透徹した目で、この半世紀の検証を進めてもらいたい。

PR情報