政府税制調査会が地球温暖化対策税創設の審議に入った。ガソリン税など暫定税率廃止による減税も論点だ。公約は守るべきだが財源は大丈夫なのか。財政の窮状は国民に率直に語ってもらいたい。
地球温暖化対策税(環境税)はすべての化石燃料に課税し、使用量を抑えて二酸化炭素(CO2)の排出を減らすことが目的だ。
政府税調が検討を始めた環境省案は来年度導入が目標で税収は年二兆円。CO2排出量に応じ公平に課税されるので、例外的に高い税率をかけられてきたガソリンは一リットル当たり五円安くなる一方で、CO2の排出量が多いのに低い税率に抑えられてきた石炭や灯油などは逆に値上がりする。
道路財源の上乗せ暫定税率二・五兆円を廃止しても、一世帯千百円の負担増になるとの試算だが、地球環境への危機感が深まれば、国民も負担の分かち合いを引き受けてくれるのではないか。
むしろ鳩山由紀夫首相が気にかけているのは、来年度実施を約束した暫定税率廃止のようだ。新たな負担となる環境税を同時に導入すると暫定税率の減税分が帳消しになり、単なる看板の付け替えとの批判を招きかねない。それを警戒してのことだろう。首相は同時ではなく時間差をつけて、当面は国民に減税を実感してもらいたい−とのこだわりを見せている。
暫定税率廃止に加え、環境税を財源に温室効果ガス25%削減への道筋をつける、低炭素の緑の産業を経済成長の柱に育てる。財政難は考慮になく、あれもこれもと政権公約を欲張ったようにも映る。
来年度予算は歳入の半分以上、五十兆円規模の新規国債発行に迫られる公算が大きい。
子ども手当や高速道路無料化なども実施すれば、来年度に必要な予算は七・一兆円。予算の無駄を洗い出す事業仕分けは後半戦に入ったが、財源不足の解消は危うさを増している。
暫定税率廃止は公約であり実施すべきだが、金融危機以来の税収激減を直視した時、環境税導入に時間をおく余裕はあるのだろうか。
同時実施は菅直人副総理ら閣内からも出始めている。環境税を財源に自然エネルギー産業などを育て経済を浮揚させる。その工程表を示し国民の納得を得る作業も欠かせないだろう。
「公平・透明・納得」。首相が自ら宣言した税制の理念だ。暫定税率廃止と環境税導入を首相は国民に率直に語りかけ、その是非の論議を深めてほしい。
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