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11月26日付 編集手帳

 「法王」の異名を取った日本銀行総裁に、一万田(いちまだ)尚登(ひさと)がいる。戦後の金融界に君臨した人は、伝説的な“暴論”を説いている。〈日本に乗用車工業は要らない〉。1950年(昭和25年)のことである◆国の貴重なカネを貧弱な国産メーカーにつぎ込んでも意味がない。国際分業の時代、乗用車は米国に依存すればいい――という理屈である。一万田氏の意思が通っていれば、トヨタやホンダなど日本を代表する企業はいま、影も形もなかっただろう◆何を残し、何を切り捨てるか、「事業仕分け」の作業がいかに難しいものであるかを、この挿話が物語る◆政府の事業仕分けで科学技術に厳しい判定が相次ぎ、研究者から批判の声が上がっている。ノーベル賞受賞者の野依良治さんは「歴史という法廷に立つ覚悟があるのか」と政府に問うた◆誰しも神ならぬ身、どの分野が、何の研究が未来の生きる糧となるかは測りがたい。法王と呼ばれても一個人の一万田氏とは比較にならぬほど、鳩山内閣がもつ生殺与奪の権限は絶大だろう。そうであればこそ、仕分けの結論は謙虚に、ひたすら謙虚に下されねばなるまい。

2009年11月26日01時29分  読売新聞)
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