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11月25日付 編集手帳

 新聞記者はときに、押しが強くないとやっていけない。取材で気後れしないよう、無理してデカイ顔をする時もある。押しと顔(オシトカオ)を逆さまにして丘灯至夫(オカトシオ)、筆名の由来という◆作詞家の丘さん、本名・西山安吉さんが毎日新聞に入ったのは戦時下、世相が暗く険しいころである。その人が戦後に書いた詞は「高校三年生」「高原列車は行く」「東京のバスガール」…どの歌も弾むように明るい◆無粋な「押しと顔」を、丘に立つ洋館の窓に灯がともるような美しい筆名に変えた人は、暗い記憶から光まばゆい風景を紡ぐ手品師でもあったろう。丘さんが92歳で死去した◆「高校三年生」は二番の歌詞〈ぼくら/フォークダンスの手をとれば/甘く(にお)うよ黒髪が〉のくだりが最初に浮かんだという。ある高校の学園祭で目にしたフォークダンスに、男女が手をつなぐことなど夢にもあり得なかった自分の青春を顧みてショックを受け、歌になったとか◆戦後の昭和にキラキラと、光の粉をまいた人である。訃報(ふほう)が流れたきのう、懐かしいメロディーに乗せ、何人があの詞を口ずさんだだろう。

2009年11月25日01時09分  読売新聞)
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