HTTP/1.0 200 OK Age: 2 Accept-Ranges: bytes Date: Wed, 25 Nov 2009 02:21:06 GMT Content-Length: 8407 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Tue, 24 Nov 2009 14:40:06 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説2 EUの「顔」は名より実を(11/25)

 加盟27カ国の最後にチェコが批准し、来月発効する「リスボン条約」のもとで、欧州連合(EU)の顔が出そろった。首脳会議の常任議長である大統領にベルギーのファンロンパイ首相が就く。外相級ポスト(外交安全保障上級代表)は英国出身のアシュトン欧州委員に決まった。

 人選は域内の駆け引きを映す妥協の産物だった。初代大統領には知名度の高い英国のブレア前首相も擬せられたが、中道右派政権のドイツ、フランスが消極姿勢を示した。混迷の末、中堅国のベネルクス出身という中立的な人事に落ち着いた。

 EU共通の外交や安全保障を取り仕切る外相級ポストは大統領人事と釣り合いをとった色彩が濃い。アシュトン氏起用は「ブレア落選」の英国への埋め合わせと中道左派勢力からの選出という2つの意味がある。

 2人とも世界での知名度は低い。国の規模や生い立ちで食い違う域内各国の意見をまとめ、拡大と深化を率いる調整力が期待される。名より実をとる欧州らしい均衡感覚だ。ドイツとイタリアは2年後の欧州中央銀行総裁人事を意識して、候補者を売り込まなかったようだ。

 EUの顔がこんなに地味で大丈夫かという指摘もある。米国を追って中国やブラジルら新興国が台頭し、他地域の連合体も経済面で発言力を高めている。大統領はオバマ米大統領や胡錦濤中国国家主席と渡り合う存在だが、手腕は未知数である。

 評価を左右するのは実行力だ。EUが大統領や外相級ポストを置くのは、より迅速で一貫した意思決定が狙いだった。派手さはなくとも域内の人々が納得できる形で欧州の進む方向を示すべきだろう。

 昨年来の金融危機でEUは不況脱却への結束を試されている。高齢化が進む一方で構造改革が停滞し、生産性の底上げや悪化する財政の立て直しが不可欠だ。金融不安に揺らいだ中・東欧はもとより、単一通貨のユーロ圏内でもギリシャ経済への不安が金融市場で台頭している。

 地球温暖化や核軍縮といった地球規模の課題、イランやアフガニスタンの地域問題でもEUの影響力は大きい。日本もEU新体制の懐に深く入り、共通の利害と協調を積極的に訴える必要がある。

社説・春秋記事一覧