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EU大統領選出 欧州は発言力を強化できるか(11月24日付・読売社説)

 「一つの顔」「一つの声」で発信する欧州連合(EU)の難しさを、改めて示した人選だ。

 EUの最高意思決定機関で、加盟国首脳で構成される欧州理事会は、初の常任議長と、新設される対外活動庁を率いる外交・安全保障上級代表を選出した。一般には、EUの「大統領」と「外相」と呼ばれる職務である。

 「EUを対外的に代表する」だけで、一国の首脳や外相のような権限はない。だが、これまで欧州理事会の議長は半年ごとの輪番制で、上級代表も、手足となる官僚組織を持たなかった。欧州統合の歩みが進んだのは確かだろう。

 両ポストは、国際社会におけるEUの政治的発言力を高めるために設けられた。世界のリーダー役を担う米国と、急速な経済成長を背景に影響力を強める中国に対抗するには、「EUの顔」が必要になる、との判断だった。

 だが、常任議長に選ばれたベルギーのファンロンパウ首相は、国内での調整手腕は知られるが、EU域外では無名に近い。上級代表になるアシュトン欧州委員(通商担当、英国出身)も、外交手腕は未知数だ。

 「顔」としての適性に疑問が出ても不思議はないだろう。

 常任議長の有力候補には当初、ブレア前英首相の名が挙がっていた。しかし、欧州統合の牽引(けんいん)役を自任する独仏両首脳が、知名度の高いブレア氏の前に自らの存在感が低下するのを懸念して、ファンロンパウ氏を推したとされる。

 欧州政界の多数派である保守陣営から常任議長、第2勢力の社民主義陣営から上級代表を選び、しかも、両ポストを小国出身者と大国出身者に振り分けるなど、域内の調和も図られた。

 今回の人選は、その利害調整と妥協の産物だった。

 欧州石炭鉄鋼共同体に始まるEUは、いつも加盟国間の利害調整に手間取りながら、統合と拡大を続けてきた。知名度より調和を重視した人選びは、EUらしいとも言える。

 27か国に膨らんだEUの機構改革を促すリスボン条約は、来月発効する。「大統領」と「外相」の選出は、その序章である。

 リスボン条約には、常任議長や上級代表の権限について、詳細な規定はない。その職務に就く人の個性や仕事ぶりが、イメージを作り上げていく、という側面もあるのだろう。

 2人の仕事ぶりを、しばらくはじっくりと見守りたい。

2009年11月24日01時07分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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