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天声人語

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2009年11月24日(火)付

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 勤労感謝の日、東京の芝公園で野宿者への炊き出しをしていた。昨冬の「年越し派遣村」で救われた人たちが、恩返しにと一肌脱いだそうだ。日比谷公園の列に並んだ男性が、この日はご飯や豚汁を配る側にいた▼いい話には「再訪もの」が結構ある。20年前の「一杯のかけそば」を覚えておられようか。大みそかのたびに年越しそばを分け合う母子3人を、そば屋の夫婦はひそかな大盛りで応援した。来店が絶えて久しい年の瀬、近所の皆が母子に思いをはせる店に、医者と銀行員になった息子たちが老母と現れる▼泣かせどころ満載の、よくできた話だった。実話という触れ込みも筋に力を与えた。当時はバブル経済の絶頂期。感動の押し売りと言われようが、お金で買えない人情に世の中が飢えていた▼再訪の孝行息子たちは、人生最大のぜいたくだとかけそば3杯を注文する。このラストまで読み返し、えも言われぬ違和感が残った。恋しいほどの清貧も、現実の貧しさが生々しすぎて安っぽく映るのだろうか▼日本では6人に1人が貧困とされる。「かけそば」のような一人親世帯に限れば、主要国では最悪の5割超が貧困層という。とりわけ、親の仕事が不安定な母子家庭は厳しい。炊き出しに並びたい親子もいるに違いない▼弱者が弱者を支える光景は胸に迫るが、それは公の無策の裏返しでもある。日本経済がデフレ状況にあると認めたからには、消費がさらに縮こまらないよう、家計と雇用を温める政策を最優先してほしい。この貧困、美談で救えるものではない。

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