HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Mon, 23 Nov 2009 02:16:31 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:飢餓10億人 富裕国の理解が足りぬ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

飢餓10億人 富裕国の理解が足りぬ

2009年11月23日

 世界で飢えに苦しむ人々が今年末で、十億人を超える。気象異変による穀物の不作と食料価格の高騰、加えて昨年来の世界的な経済危機も影響している。食料増産と安定供給に英知を集める時だ。

 ローマに本部を置く国連食糧農業機関(FAO)で今月中旬、「食料サミット」が開かれた。

 世界の総人口は約六十八億人。昨年、各国で食料が高騰し途上国の一部では暴動も起きた。現在は主要穀物の国際価格はピーク時だった昨年前半の半分程度に下がったが、それ以前と比較すれば「高止まり」の状態だ。途上国では所得が減少して食料購入がいっそう困難になっている。

 サミットで採択された共同宣言では、政府開発援助(ODA)における農業開発支援の大幅な増加や、途上国が予算の10%以上を農業投資に充てることなどを呼びかけた。

 だが、今回の会議には不満が残った。国連は「飢餓、栄養不足の人口を二〇一五年までに半減する」との目標を掲げている。サミットでは一歩進んで「二五年に飢餓を根絶する」と宣言する意向だったが、支援増額を迫られる先進国の反対で見送られた。

 途上国の農業インフラは脆弱(ぜいじゃく)だ。先進国、富裕国はこれまで以上に、農地、かんがい、道路の整備を支援し、災害に強い種子を提供する努力が必要だ。

 近年浮上した問題もある。石油に代わるバイオ燃料の材料としてトウモロコシなど穀物が使われ、本来は食料に回るはずの農産物の価格上昇を招いている。

 また、中国やアラブの産油国がアフリカや南米の農地に投資し、自国向けの農産物を生産しようとする動きが出ている。現地の人々が安い価格で土地を手放し、自らの食料も手に入らない悲劇も起きているという。

 FAOなど国連機関は食用に適さない植物を使ったバイオ燃料の開発を促すとともに、他国の農地への投資を規制する法案づくりを進めるべきだ。

 穀物不作の要因は干ばつや洪水、日照不足だが、根本的な原因は地球温暖化だといわれる。豊かな国々が温暖化対策に本気で取り組まないと、貧しい国々は常に飢えに直面する。

 日本の食料自給率は約41%。飽食に慣れた私たちだが、世界規模で食料危機が起きる恐れもある。「食べ物がない」のは遠い世界の出来事だろうか。自給率を高める政策を進めなくてはならない。 

 

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