HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Mon, 23 Nov 2009 00:16:26 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:初代EU大統領 統合深化へ見せた知恵:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

初代EU大統領 統合深化へ見せた知恵

2009年11月23日

 欧州連合(EU)の初代大統領が選出された。歴史的な一歩、の割には控えめな人選となり、選考過程も透明だったとはいえないが、一層の統合深化へ向けた欧州の知恵と見るべきだ。

 名は体を表すという。初めてのEU大統領に、国際社会では事実上無名のファンロンパイ・ベルギー首相が選出された背景には、EUが抱える大国、小国間の現実的な力関係がある。

 EU二十七カ国の国内総生産(GDP)はほぼ米国に並ぶ。域内人口五億人は巨大な市場をなす。単一通貨ユーロも、ドルに次ぐ基軸通貨の地位をうかがうまでになった。

 大統領(欧州理事会常任議長)と外相(外交安全保障上級代表)のポストを新設したリスボン条約は戦後、独仏不戦の誓いをもとに発足、半世紀を経てここまで拡大した超国家組織を、グローバル化する時代に適合させるための効率化の試みだった。さまざまな曲折を乗り越え、統合の深化を象徴する大統領誕生にまでこぎつけた成果を評価したい。

 「生みの苦しみ」にはEUらしさがにじんだ。本命とされたブレア前英首相が消え、独仏が推す小国出身者の選出に移っていった。国際社会での大きな影響力行使を求めながら、その陰に隠れそうになる加盟国家の存在感も失いたくない。そんな各国の揺れ動く本音を見る思いだ。結局強大な権限を持ちかねない大統領よりも、調整型の常任議長タイプで決着した。

 EU大統領が直面する課題は山積している。まずは大統領選出の過程ではしなくも露呈したが、「民主主義の欠乏」とも批判される意思決定プロセスの透明性を高めることだろう。歴史的な初代大統領の選出過程が、民主主義の欠如を象徴するものと言われるようであってはなるまい。旧ユーゴスラビア諸国、トルコなどの加盟問題も控えている。

 リスボン条約は、意思決定の迅速化、立法の際の加盟各国議会への議案送付、請願制度の導入など、諸課題に対応する改定を含んでいる。同時に選出されたアシュトン新外相とともにどう実行に移してゆくのかが問われる。

 EUは不戦、民主主義、人権、市場経済などの共通した理念のもとに、国民国家の枠を超えた諸問題に対処する解決モデルの一つだ。日本の鳩山首相をはじめ、地域統合モデルとしてあげる政府指導者も多い。さらなる統合深化へ具体像を示していってほしい。

 

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