ビジネス雑誌などで、今年流行した商品を振り返る記事の掲載が始まった。安値、安全、環境など生活防衛色の強い顔ぶれに、ヒットの特徴を示すものとしては珍しい言葉が交じる。「すれ違い」と「つぶやき」は新顔の代表格だろう。
▼通信機能付き携帯ゲーム機向けに人気の「ドラゴンクエスト」最新作が発売された。スイッチを入れた人同士が町ですれ違うと、ゲームの中で使う地図を自動的に交換、入手できる。東京・秋葉原の家電量販店前は有名な集合場所だ。ゲーム機を凝視する人々が無言で集い、外国人観光客が不思議顔でのぞき込む。
▼140字のつぶやきをネット上で交換するのが米国の「ツイッター」。日本からの利用者は200万人を超えたという。誰かがつぶやけばすぐにほかの誰かが読み、感想を書く。何を食べたか。映画の良しあし。さらには事業仕分けのネット中継を見ながら議論を戦わせたりと、硬軟両面で人々を結びつけていく。
▼いま起きたこと、いま感じたことを読めるツイッターは「人のぬくもりを感じられる」とネットに詳しい神田敏晶氏は近著で語る。ドラクエの通信も同好の士の広がりを感じさせ、売れ行きを後押しした。趣味や関心は合う。しかし踏み込んでは来ない。遠からず近からずの関係が人を引き付けているのだろうか。