HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 58629 Content-Type: text/html ETag: "396464-1635-fe8650c0" Expires: Sun, 22 Nov 2009 02:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 22 Nov 2009 02:21:05 GMT Connection: close スパコン凍結 科学技術立国の屋台骨が傾く : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

スパコン凍結 科学技術立国の屋台骨が傾く(11月22日付・読売社説)

 科学技術に対する新政権の基本姿勢が問われるのではないか。

 文部科学省の「次世代スーパーコンピューター(スパコン)」開発事業が、行政刷新会議の事業仕分けで「事実上の凍結」とされた。

 スパコンは科学技術研究用の高速計算機だ。最新のものはパソコンより100万倍も速い。

 コンピューターの頭脳であるCPU(中央演算処理装置)が1000個以上、その他部品も高速動作するものを使う。本体も巨大なことが多く、計算時の発熱を防ぐため、ほとんどが空調完備の大部屋や建屋に設置されている。

 気候変動予測や航空機設計、生命現象の解明など多分野で「シミュレーション(模擬実験)」に使われている。実際の実験が難しい分野では欠かせない。研究期間の短縮、費用の圧縮もできる。

 その重要性から、世界で開発競争が展開され、日本の計画も世界をにらんでいる。こうした意義を軽視していいのか。

 現在、スパコン開発でトップを走るのは米国だ。上位機種の計算速度は、1秒間に1兆回の1000倍程度に達している。

 日本の次世代スパコンは、これを1(けた)上回ることが目標だ。1桁でも、例えば航空機開発なら、単純計算で開発期間が10分の1になるのだから恩恵は大きい。

 しかし、最先端で1桁性能を向上させるのは容易でない。基本部品である半導体の開発など幅広く手がける必要があり、民間だけでは挑めない。

 米国など各国も、政府発注により開発を進めており、日本も来年度予算の概算要求に約270億円を盛り込んでいる。

 事業仕分けでは「1位を目指す必要があるのか」「海外から買えばいい」などの声が出た。こんな現状認識は甘い。

 1位を目指すくらいでないと世界に()せない。2002年に日本のスパコンが計算速度で世界1位になったが、2年半で抜かれ、今は31位だ。中国、韓国が保有するスパコンにも後れを取る。

 海外から買うにも最先端技術は各国が詳細を秘している。一般的な性能のものしか買えない。

 日本で最先端スパコンが使えないと、優秀な研究者が流出することにもなりかねない。スパコン凍結で日本の科学技術は衰退に向かう、との海外報道もある。

 事業仕分けでは、他の科学技術関連予算も厳しくたたかれた。無駄排除は当然だが、日本の科学技術の命脈を断つ事態は困る。

2009年11月22日00時10分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
現在位置は
です