菅直人副総理兼国家戦略担当相がデフレを宣言した。問題は政府と日銀の双方にある。経済運営の基本方針がはっきりしないのだ。政府と日銀は経済の現状について早急に議論を始めるべきだ。
菅副総理・国家戦略担当相は日本経済について「デフレ状況という認識だ。金融の果たすべき役割も多い」と語った。政府のデフレ宣言であり、妥当である。
最近の動向をみれば、一時下げ止まったかにみえた物価が再び下落基調を加速しているのは明らかだ。
世界標準の指標である食料とエネルギーを除く消費者物価指数は二〇〇八年十一月に前年同月比で横ばいになった後、〇九年一月から下がり、九月で九カ月連続の下落になった。七〜九月期の国内総生産(GDP)の国内需要デフレーターもマイナス2・6%と過去三番目の下落幅を記録した。
こんな物価状況に対して、日銀の認識は極めて甘い。先の経済と物価の展望リポートでは「(下落幅は)徐々に縮小していく」「やや長い目で見れば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく展望が開ける」と記した。
足元の数字が明確な下落基調を示しているのに、どんな根拠があって下落幅が縮小していくと予想するのか理解しにくい。ずばり言えば、楽観的期待を現状認識に投影させているかのようだ。
経済協力開発機構(OECD)は日本経済に関する報告で「一一年まで失業率は5%半ばにとどまり、デフレが続く」と指摘し「量的緩和を効果的に実施するという確約を通じてデフレと闘うべきだ」と異例の注文をつけた。日銀はこうした指摘を謙虚に受け止めて、物価認識を改めるべきだ。
物価安定は経済成長の大前提であり、まず日銀が物価に責任をもつのは当然である。だが、日銀にボールを投げてしまえば、それで済むわけではない。財政を担う政府と金融を担う日銀が両輪となって政策を展開しなければ「物価安定のもとでの成長」という大目標を達成するのは難しい。
現状はといえば、政府には経済財政運営の司令塔がないかのようだ。予算編成も税制改正も各論だけがあって、経済をどう運営していくのか肝心の総論が聞こえてこない。これでは日銀と議論しようにも、そもそも出発点がない。
政府と日銀はともに日本経済に重い責任を負っている。その点をあらためてかみしめてほしい。
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