日経平均株価が約4カ月ぶりの安値をつけた。海外投資家が日本株から離れたほか、将来の資本調達に不安を抱く銀行や事業会社の駆け込み増資が相次いでいることが大きい。
鳩山政権の経済政策は迷走気味でマクロの経済環境も悪化している。企業が資本調達を進めるには投資家に経営改革によって業績向上を確信させるメッセージが必要だ。
公募増資など資本調達が増えているのは世界的な流れであり、株価の下落要因になっている国も多い。そんななかでも、日本市場の調達の増え方は突出している。
2009年初めから11月半ばまでの日本以外の世界の調達額は、金融機関への公的な支援も含め、6353億ドルと昨年1年を3%ほど上回る(トムソン・ロイター調べ)。日本は397億ドルと2.6倍だ。
増資ラッシュの中心にいるのは銀行グループだ。新しく導入される国際的な自己資本比率規制の達成が危ぶまれ、融資など銀行業務に支障が出かねないとの切迫感がある。
1兆円の増資予定を発表した三菱UFJに続き、三井住友とみずほの双方も検討を進めているもようだ。銀行が資本対策として新たに必要とする金額の推定は、3グループ合計で2兆〜4兆円と幅がある。いずれにせよ巨額であり、投資家に先行きへの不安を抱かせる。
それでも目詰まり気味の企業金融を円滑に機能させるための増資ならば、実施する意義もあろう。気掛かりなのは資金を借りる側の事業会社が、銀行機能の回復を信じていないのではないか、という点である。
設備投資や企業買収などに必要な金額を超え、過剰に資本を調達しようとする事業会社も多い。融資や債券で資金調達できなくなった場合への備えだろう。不採算事業からの撤退や新興国での業容拡大など、打つべき手を打たないまま資本の調達に走れば、株価は下がって当然だ。
言うまでもなく企業は、配当のほか、株主からの高い成長期待に応える義務を負う。資本主義の行き過ぎを反省する機運のなかで、株式会社の主役である株主の立場が軽んじられているとすれば問題である。
株安の背景には、国として明確な成長戦略を欠き、デフレを止められない鳩山政権への失望もある。しかし、株価に最終的な責任を持つのは株式を発行する個別の企業だ。
全般的な株価水準はまだ金融システムや経済を大混乱させるほど低いわけではない。だからこそ今、銀行を含め企業は改めて自問すべきだ。その増資は本当に必要か、と。