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なぞなぞをひとつ。子どものころには角(つの)が2本あって、大人になると角がなくなり、年をとるとまた角が生えてくるものはなあに? 答えは「月」。細く欠けた月の尖(とんが)りを、角に見立てた謎かけである▼『月の本』(河出書房新社)という一冊をめくると、世界の民族の月をめぐる豊かな想像が楽しい。餅つきの兎(うさぎ)だけでなく、人間から蜘蛛(くも)まで多彩な「住人」があの球体にいる。狼(おおかみ)に追われた蛙(かえる)が思いっきり跳ねて月に逃げた、というのはアメリカ先住民の言い伝えだ▼その蛙が導いたのかどうか、米航空宇宙局(NASA)の探査機が、月で「まとまった量の水」を発見した。切り離したロケットを月に衝突させ、舞い上がった土などを分析した。また一枚、月のベールがはがされた▼乾燥した世界と思われていただけに研究班は興奮気味らしい。会見場にバケツを持ち込んで、見つかった量を「これに12杯ぐらい(約90リットル)」と説明した。「月の水」という究極の銘水を味わえる日が遠からず来るかもしれない▼ジュール・ベルヌのSF小説「月世界旅行」を思い出す。南北戦争の終わった米国で、大砲を使う機会がないと嘆く人々が、月に砲弾を撃ち込もうと思いつく。そして3人を乗せた砲弾が発射される▼そんな絵空事が100年後には現実になった。神話から空想へ、空想から現実へと、科学技術を道連れに人類は歩んできた。宇宙に限らず、歩みは加速の一途だろう。時の政府が科学への「まなざし」を欠くなら、未来への大きな落とし物をすることになりかねない。