米国と北朝鮮の高官対話が十二月上旬に行われる。北朝鮮が六カ国協議に復帰し核放棄に進むことが、国際社会の要求だ。国連安保理の制裁決議を踏まえながら、次は対話で軟化を引き出したい。
ソウルで十九日、開かれた米韓首脳会談。オバマ米大統領は終了後の記者会見で、ボズワース北朝鮮担当特別代表が大統領特使として十二月八日から訪朝すると明らかにした。
注目すべきは共同会見でのオバマ大統領の発言だ。「北朝鮮が後戻りできない方法で核兵器開発計画を放棄する」よう促し、その場合は「米国は経済支援をし、北朝鮮が国際社会と調和できるよう助ける」と明言した。
大統領は東京の演説でも、北朝鮮が核を放棄して孤立政策をやめれば「貧困ではなく、経済的なチャンスという未来が訪れる」と呼び掛けた。
ブッシュ前政権は北朝鮮が核放棄へ一歩進むごとに支援を拡大する「段階方式」で対応してきた。だが北朝鮮は満足せず、核実験という事態を招いた。
この反省から、オバマ政権は核を放棄させるには経済支援だけでは足らず、軍事対立の解消、米朝関係正常化など将来の目標も提示する「包括的な解決」を模索し始めたようだ。
韓国は先に、北朝鮮の非核化の見返りとして大規模な経済支援をするという「グランドバーゲン(壮大な取引)」を提示している。李明博大統領はオバマ大統領との間で「非核化と支援をパッケージにした一括妥結が必要だとの認識で一致した」と述べた。
実は中国も、核問題解決に向けたさまざまな政策を盛り込んだ「バスケット方式」と呼ぶ包括的な解決を考えているという。
ただ、北朝鮮は憲法改正により「先軍政治」という軍事独裁体制を固めた。自国の安全と体制が保証されない限り、核を放棄はしないという姿勢で一貫している。
包括的な解決方式が通じるか楽観はできないが、米朝対話は対立から協調への入り口である。北朝鮮はこの機会を逃さず直ちに六カ国協議に復帰して非核化の道を進み、国際社会の一員となるべきだ。
鳩山政権は拉致問題解決に取り組む姿勢を示してはいるが、北朝鮮政策の全体像がまだ見えない。米中韓が包括的なアプローチを検討しているいま、核問題や日朝関係を視野に入れた政策づくりが問われている。
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