ひどく景気のいい印象がある中国だが、誰もが、わが世の春を謳歌(おうか)しているわけではない▼少し前に訪ねた陝西(せんせい)省の省都西安では、大学新卒者の就職が難しいと現地の人がしきりに嘆いていた。曰(いわ)く、「『卒業は失業』という言葉があるくらいです」。況(いわん)や、わが国においてをや、というべきか▼文科、厚労両省の調査によれば、来春大学卒業予定者の十月一日現在の就職内定率がまだ62・5%にとどまっているという。前年同期比7・4ポイント低下は、調査開始の一九九六年以降で最大の下げ幅。バブル崩壊後の、いわゆる「就職氷河期」並みの状況という▼だが、それ自体、実は過去の話ではない。その氷河期に社会に出たのが、今の「ロスト・ジェネレーション(失われた世代)」。ニートや、非正規労働者も多く、ワーキング・プアの中核をなす世代といってもいい▼新たな貧困を生まないためにも、今の学生たちに公的就職支援策が必要なのは当然だが、それにしても、と思う。バブル後遺症にしろ今の世界不況にしろ、時々の学生たちには何の責任もない。巡り合わせとでもいうほかないのだから、気の毒だ▼季節ははや、冬のとば口。なお懸命の就職活動の途上にあって、このところの冷え込みを一入(ひとしお)に感じているだろう、その胸中を察する。彼や彼女を待っているのが、「卒業は就職」の春であるように、と願う。