HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 21765 Content-Type: text/html ETag: "2f8fc0-5505-80cdd340" Cache-Control: max-age=4 Expires: Thu, 19 Nov 2009 23:21:06 GMT Date: Thu, 19 Nov 2009 23:21:02 GMT Connection: close
アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
これでは、自民党政権時代の国会の風景と変わらないではないか。
民主、社民、国民新の与党が、中小企業の借金や住宅ローンの返済猶予を金融機関に促す中小企業等金融円滑化法案の採決を衆院で強行した。
不況下の日本の金融のあり方を見つめ直す議論もできたはずだが、委員会の質疑は2日間、約8時間で打ち切られた。企業が資金繰りに追われる年末を控え、政府与党は成立を急ぎたいのだろうが、いかにも拙速である。
与党は、他にも重要な法案があり、30日の会期末をにらむとこの日がタイムリミットだったと説明する。自民など野党側には審議引き延ばしの思惑もあろう。しかし、だからといって審議の過程を軽んじていいはずがない。
野党は反発を強めている。民主党は今後、与党単独での審議・採決を繰り返すつもりなのだろうか。
戦後初めて本格的な政権交代が実現し、官僚主導から政治主導への転換をはじめ、政治の姿は大きく変わりつつある。国会のありようも例外ではない。そんな期待が高まっていた。
実際、鳩山由紀夫首相の所信表明演説は、自分の言葉で政治理念を語り、新鮮な印象を与えた。委員会審議では、野党の質問者も、受けて立つ首相や閣僚もメモに頼らず、政治家として論戦を繰り広げる場面が目立った。
それだけになおさら、今回の採決強行は「古い国会」への逆戻りを印象づけた。審議の中身より、日程をめぐる与野党間の駆け引きが前面に出る、いわゆる「国対政治」である。
党首討論が見送られていることと併せて、国会活性化への期待に冷や水を浴びせるものだ。
官僚による答弁や国対政治を排し、政治家同士が真剣に議論を戦わせる。そんな国会への改革にこだわっているのは、他ならぬ民主党の小沢一郎幹事長だ。その趣旨を生かして、新しい国会運営を模索すべきではないか。
審議を待っている法案のうち、郵政民営化の見直しを掲げる鳩山政権の基本姿勢が問われる株式売却凍結法案では、とくに徹底した論議が必要だ。与党が数を頼りに成立を急ぐようなことがあってはならない。
政府は12月の予算編成への影響を避けるため、国会の会期延長には否定的だが、こうした重要法案をきちんと審議するために必要とあれば、ある程度の会期延長も考えるべきだろう。
小沢氏の求めに応じ、有識者らでつくる21世紀臨調の有志がまとめた国会改革の提言には、会期を気にせずに審議ができる「通年国会」の実現などが盛り込まれている。
来年の通常国会に向けて、与野党で国会改革の議論を深める時だ。与党が数の力で突っ走る国会の姿は、政権交代の時代にふさわしくない。
木枯らしの中、まだ就職活動を続ける大学4年生が多くいる。10月初めの段階では、就職希望者の4割近くが内定を得られていなかったという。
内定率は「就職氷河期」さなかの03年ごろの水準まで落ち込んだ。景気の行方が定まらない状況で、企業が採用予定数を絞ったうえ、人材を厳選しようとしている表れだろう。高校生の内定率も同様に深刻だ。
企業は95年から05年ごろにかけて新卒者の採用を抑え、非正規の労働力に置き換えた。正社員になれなかった人は、技能を身につけられぬまま派遣やフリーターを続けざるを得なかった。収入が不安定なため、家族や子どもを持つこともためらってしまう。昨年の金融危機の直撃で、職と住まいを失った人も少なくなかった。
そうした「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代をどう支えてゆくかは、いま社会の重い課題になっている。その轍(てつ)を踏まないためにも、来春に向けた就職支援にできるだけの手を打つべきだ。
政府の緊急雇用対策本部は、新卒者の支援策に乗り出し、経済団体に採用の拡大を呼びかけている。ところが企業からは、現状の雇用を守るだけでも精いっぱいだとの悲鳴が聞こえる。
人手不足に悩む業種や、採用意欲が高い中小企業もあるはずだ。学生にとっては安定志向で大企業を狙うより、新しい成長分野に目を向けるチャンスかもしれない。ハローワークと学校が連携して地域の求人を掘り起こす。学生とのマッチングの機会を増やす。そんな工夫を重ねてほしい。
その上で、長い目で考えるべき課題がある。企業が毎春、新卒者をまとめて採用する慣行が、もはや限界に来ているのではないかということだ。
経済成長が続き、企業が終身雇用のもと人材育成を引き受けていたからこそ成り立ってきたシステムだ。今のように景気が悪くなるたび正社員枠からあふれた不安定雇用層が生まれ、将来にまで固定化される構造は、社会の活力維持のためにも望ましくない。
多様な人材が求められる時代である。学生、企業の双方にとって、就職・採用の機会は新卒時の1回だけで十分といえるだろうか。
卒業後、何度も正社員にトライできるよう、中途採用や通年採用を広げたい。仕事に就いていない若者が技術や技能を身につけ、挑戦を続けられるような支援の仕組みも必要だろう。
不況下の新卒一括採用は、大学教育にも大きなひずみをもたらしている。
企業はよりよい人材を求めて採用活動の開始を早め、不安にかられた学生は説明会や面接に奔走する。就職活動に学業の時間がすりつぶされている。その結果、人材としての力が損なわれては本末転倒ではないか。