鳩山内閣が中央集権体制を抜本的に改めるために「地域主権戦略会議」を設置した。政権交代は権限を国から自治体に取り戻す好機だ。「地域が主役」を肝に銘じて、税財源を含めた移譲を急げ。
民主党はマニフェストで、国と地方自治体との関係を明治維新以来続いた上下・主従の関係から、対等・協力の関係に改める「地域主権国家」への転換を掲げた。
自治体への権限移譲は長年、その必要性が唱えられながら、権限を失う中央省庁や、その意向を受けた族議員の抵抗で、遅々として進んでこなかった難題でもある。
立案と実施、双方の機能が与えられた戦略会議は、自治体への権限移譲を進める司令塔であり、改革推進のエンジンだ。
これまで四次にわたる地方分権改革推進委員会による勧告なども考慮し、地域主権国家づくりを強力に推し進めてほしい。
原口一博総務相は、二〇一一年度から国が使途を制限する「ひも付き補助金」を廃止し、各自治体が自由に使える「一括交付金」として交付する方針を表明した。
しかし、内閣府は推進委の第三次勧告を受けて各省に対し、国が地方の業務を法令で縛る「義務付け・枠付け」のうち、保育所設置基準など自治体の要望が高い百四項目を見直すよう要請したが、一回目の回答締め切りで受け入れは二十八項目にとどまった。
国が基準を押しつけたままでは、一括交付金化しても自治体の自主性は発揮できない。
逆に、自治体に権限に見合う財源も移譲しなければ、単なる負担の押しつけになってしまう。
権限と財源が一体として大胆に移譲されるよう、鳩山由紀夫首相は戦略会議の議長として、地域主権国家づくりの議論をリードすべきだ。
地域主権の根本は、地域の実情にあった行政サービスが受けられるよう、自分たちのことは自分たちで決めるということだ。そこには当然、責任も付いてくる。
権限が移譲されれば、首長、議員は従来よりも大きな権限を持つことになる。野放図な自治体経営をしている首長や、利権屋まがいの議員は排除されなければならない。
それらを選ぶのは住民であり、投票行動の結果は即、自分たちに跳ね返ってくることも覚悟しなければならない。そうした繰り返しが民主主義を強くする。地域主権の主役は住民一人ひとりなのだ。
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