初訪中したオバマ米大統領は胡錦濤国家主席と会談し地球温暖化や核拡散防止などで協力を深めると合意した。日本の存在感が薄れると心配するより、新たな環境で発展のチャンスを探るべきだ。
記者会見したオバマ大統領によると、両国は来月の気候変動枠組み条約第十五回締約国会議(COP15)が「政治的宣言」にとどまることなく、ただちに効力を発揮する「総合的合意」を達成できるよう努力すると申し合わせた。
北朝鮮の核問題に関して、胡主席は「双方は関係国と一致して朝鮮半島の非核化と六カ国協議のプロセスを堅持し、北東アジアの安定を維持する」と明言した。
金融危機の克服には「米国はもっと貯金し浪費を減らし(中略)中国は国内需要を促す」(大統領)と両国経済の在り方にまで立ち入って協力を誓い合った。
訪中前に東京で「強く繁栄した中国の台頭は国際社会の強さの源になりうる」と述べた大統領の言葉通り、地球レベルの問題に両国が手を携え挑むことになった。
二十一年連続して国防費を二けたで伸ばし急速に国力を強める中国が米国と関係を深めることに周辺国は関心を持たざるを得ない。
ましてや普天間飛行場移転問題などで米国との同盟関係が、ぎくしゃくしている日本では日本が忘れられると心配する声も出よう。
しかし、日本をはさむ二大国(G2)が対立し、米国が中国の封じ込めを図ったらどうか。
日本と中国の交流ばかりか、米国との往来も制限され、日本のビジネスに大きな影響が出るに違いない。両国の協調は対立より日本に、より多くの機会をもたらす。
地球温暖化問題でも京都議定書策定には、人ごとのような態度を取っていた温暖化ガスの二大排出国が排出削減の合意達成に努力するようになったことは心強い。
日本は大胆な削減目標を打ち出し、環境・省エネ技術では世界的にも定評がある。米中両国に協力することは温暖化防止に役立ち、新たな商機も生む。
大統領が会談で人権や自由の問題を提起したように、米中の間には根本的な価値観の違いが横たわる。中国で人権抑圧や宗教迫害が表面化すれば両国関係は、ただちに動揺するもろい一面がある。
米国と価値観を共有しながら、中国と同じ東洋の国として深いつながりを持つ日本は今後も、米中の間で日本にしか果たせない独自の役割を発揮できるはずだ。
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