HTTP/1.0 200 OK Age: 224 Accept-Ranges: bytes Date: Wed, 18 Nov 2009 00:17:27 GMT Content-Length: 7646 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Tue, 17 Nov 2009 14:21:35 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(11/18)

 太宰治、松本清張、埴谷雄高……。ことしは生誕100年を迎えた作家の当たり年だ。その一人、大岡昇平が「人事酒」という言葉を残している。戦争中、神戸で会社員だったころの体験をもとにした命名だと、丸谷才一さんが山口瞳との対談で披露していた。

▼「酒を飲みながら人事の話をする。これはいやなんだ。酒飲んだことにならないよ」と言っていたそうだ。「次の社長は彼らしい」。そんなうわさ話が、「なぜおれよりあいつが先なのか」という恨みとまじって湿っぽくなる。大岡が嫌った光景は、70年近くたった今でもそのままだろう。

▼この人事も、酒の肴(さかな)にしたらあまり愉快ではない。日本郵政社長に元大蔵次官がなり、きょうは前厚生労働次官が人事院人事官に就くことに国会が同意する運びという。民主党政権が掲げた「天下りのあっせんは全面的に禁止する」との御旗の裏には、小さく「ただし政権によるあっせんは除く」とでもあったか。

▼「いい酒は真ん中を通る」などという。人事話は酒を右往左往させ、まずくする。大岡にはそういう実感があったろう。天下り人事をめぐる鳩山由紀夫首相の弁明も、右往左往して政権の風味をいささか損ねている。真ん中を通ってストンと腑(ふ)に落ちる。酒には限らない。それがいい人事であり、いい政治である。

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