HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 17 Nov 2009 03:16:41 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:大きな書店や文房具店で、来年の手帳やカレンダーの売り出しが…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年11月17日

 大きな書店や文房具店で、来年の手帳やカレンダーの売り出しが始まっている。年末まで一カ月以上もあるのに、山積みになった新しい手帳を見ると、何となく慌ただしい気分になってくる▼江戸の庶民は暦が好きだった。十一月ごろから、暦売りが一年の主要な暦をまとめた一枚刷りの柱暦(はしらごよみ)を売り歩く。「来年の大小柱暦が、四文四文」などと、辻(つじ)や橋の上で声を出したという(『図説大江戸おもしろ商売』北嶋廣敏)▼こうした暦は農家が種まきの日を選んだり、婚礼や葬式の日取りを決めたりするのに重宝され、太陽暦に改められた一八七三(明治六)年以降も使われたようだ▼現代人の暦好きは手帳に向けられているのだろうか。店頭には目移りするほどの種類の手帳が並んでいる。「人生は手帳で変わる」「このままではいけないと思っているあなたのための手帳」…。こんな殺し文句を読むと、つい買ってしまう人がいるかもしれない▼海外から初めて手帳を持ち帰ったのは、一八六二年に遣欧使節団の随員として訪れたパリで購入した福沢諭吉といわれている。欧州での見聞を詳細に記した黒革の手帳は『西洋事情』など帰国後の多くの著作の礎になった▼スケジュールの欄さえ埋まれば、なんとなく仕事をした気分になるのが凡人の悲しさ。手帳に振り回されているようでは、福沢さんに合わせる顔がない。

 

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