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GDP4.8%成長―補正で民需の奮起促せ

 民間の予測を大きく上回った。7〜9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は年率換算で4.8%。前期に続くプラス成長だった。

 生活実感に近い名目GDPは年率マイナス0.3%で、水準自体も景気回復と呼ぶにはまだ遠い現状だが、元気づけられる要素が増えた。その象徴は、縮小続きだった設備投資が拡大に転じたことだ。おかげで内需が成長に寄与するようになった。いずれも6四半期ぶりである。

 エコポイントなど、これまでの政府の景気対策で個人消費が刺激された。中国や北米などへの輸出も復調の傾向にある。これを受けて、環境関連の新設備の導入が自動車や電機といった主力産業で目立つようになった。

 世界的な政策協調と日本の景気対策が、ようやく民需に波及するサイクルが見えてきたといえる。

 半面、気になるのはデフレ傾向だ。全般的な物価下落が経済を縮小させる圧力として働き続けている。それが雇用に影を落とし、失業率が高止まりしたままの厳しい状態が続く。冬のボーナスは大幅カットが見込まれ、個人消費の動向も楽観できない。

 景気を刺激する諸施策の効果が切れれば、景気全体が再び下降し、「二番底」に陥る危険がある。この意味では、政府による景気刺激策の役割はなお終わっていない。

 だが、「生活第一」を掲げる鳩山政権は、自公政権のような「ばらまき」型の刺激策を採るべきではない。とくに、場当たり的な公共事業で需要を継ぎ足すような政策ではいけない。

 社会的安全網の強化で雇用や消費を支えると同時に、回復の動きを見せている設備投資などの民需を喚起することが必要な局面である。

 民間主導の自律的な景気拡大につなげていくための呼び水として有効な政策を、重点的に打ち出すことが求められているのだ。

 この意味で、鳩山政権は内需を前向きな拡大に導くメッセージ性を込めて、2次補正と来年度の本予算の姿を早く示すことが肝心だ。

 鳩山由紀夫首相が「コンクリートから人へ」と目標を語ったように、ここでも「人間」重視の姿勢を生かしてほしい。具体的には、新たな産業基盤として期待される医療・福祉や環境分野への民間の投資を促すような政策を打つことだ。

 これらの分野は、雇用の受け皿としても大きな可能性を秘めているが、なおビジネスが育っていない。財政・金融政策による支援や規制改革をテコに、雇用創出が進んでいくと、国民が期待できるようにしたい。

 2次補正でその流れを作り、来年度予算で加速させることが最大の景気対策になるといっても過言ではない。

車年産1千万台―中国は緑色革命に弾みを

 中国での自動車の生産、販売台数が1月から10月までの合計で、ともに1千万台を超えた。年間では1300万台を超える可能性もある。販売では米国、生産では日本を抜き、いずれも初めて世界一になる。

 新車販売台数はこの10年で6倍に膨らんだ。世界経済危機でゼネラル・モーターズやクライスラーの経営が破綻(はたん)し、急速にしぼんだ米国市場や、そこに依存して伸びてきた日本メーカーの疲弊ぶりと対照的な勢いだ。

 来年にも国内総生産(GDP)が日本を追い抜く中国。世界経済の新たな成長エンジンとして寄せられた期待に応える実績だろう。だが同時に、資源や環境への影響の深刻さを考えると、中国自動車市場の急膨張は、「脱ガソリン車」への技術革新をせかすシグナルでもある。

 中国共産党・政府は雇用や技術開発のすそ野が広い自動車産業を重視してきた。高速道路はここ10年で、日本の総延長の6倍を超える距離を整備した。1千万台目には、国有企業が生産してきた中国製トラック「解放」の現代版を選び、派手に祝った。

 市場の主力は、すでに数年前から乗用車だ。所得水準が向上し、マイカーに手の届く人が増えた。国内メーカーの台頭で安い乗用車も出回るようになった。政府の購入補助や減税措置が消費を後押しした面もある。

 中国の1人あたりGDPは08年、3千ドルを超えた。大衆消費社会へ生活様式の変わり目となるとされる水準だ。日本では70年代初めにあたる。

 自動車普及率は5%足らずで、なおモータリゼーションの入り口にある。国際通貨基金の予測によると、2015年ごろに中国の1人あたりGDPは現在の約2倍になる。中国の新車販売はそのころ、1500万台規模に復活する米国と並び、2020年ごろには2千万台規模となるとみられている。

 いまの中国市場がもうひとつできるようなものだ。ガソリンエンジンに頼った20世紀型の自動車が主流のままでは、すさまじい資源消費と環境破壊に直面するだろう。

 中国共産党・政府も、成長の持続には省エネと環境保護が重要だとして、燃費規制の強化や小型車向け減税に加え、電気自動車など「環境車」の開発支援に取り組んでいる。鉄道や地下鉄など公共交通網の整備にも力を入れるようになった。こうした施策はさらに強める必要がある。

 中国市場は、日米欧韓に加えて中国メーカーがしのぎを削る大競争の舞台だ。ハイブリッド車を軸に環境車でリードしてきた日本メーカーは、頼もしい中国市場に活路を見いだすためにも、蓄えた技術を手の届く価格で商品にし、環境と発展を調和させる「緑色革命」の先導役を担ってほしい。

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