HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 15 Nov 2009 23:16:42 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:今夏、中国・旅順の二〇三高地を訪ねた。こんな小さな山がなぜ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年11月16日

 今夏、中国・旅順の二〇三高地を訪ねた。こんな小さな山がなぜ、日露戦争の激戦地になったのか不思議だったが、旅順港のロシア艦隊を一望できる場所に観測兵を置けば、圧倒的に日本に有利になると山頂で初めて理解できた▼二〇三高地の重要性を主張したのは、連合艦隊作戦参謀の秋山真之。今月二十九日から三年にわたり放映されるNHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』(司馬遼太郎さん原作)では、本木雅弘さんが秋山役を演じる▼バルチック艦隊を撃破した海上作戦は秋山の頭脳から生まれた。緻密(ちみつ)さの半面、将兵の死に直面するたび深く傷つく内省的な面もあった▼最初の戦闘後、旗艦「三笠」艦内には脚や腕のない死体や負傷者があふれていた。地獄絵図を見て、戦いが終わったら僧侶になると自らに言い聞かせたといわれる▼四十年後、日本は真珠湾を奇襲し太平洋戦争を始めた。作戦を練り上げたのは、山本五十六連合艦隊司令長官の懐刀と呼ばれた黒島亀人先任参謀だ。黒島は敗色が濃くなると、兵士の命を軽視した特攻兵器の開発に傾倒する▼日露戦争はロシア側が自滅した面が強く、日本は薄氷を踏む勝利だったが、その事実は国民に伝わらなかった。「日本軍の神秘的強さを信仰するようになり、その部分において民族的に痴呆(ちほう)化した」という司馬さんの指摘をあらためてかみしめている。

 

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