若い女性の間で増えている子宮頸(けい)がんの予防ワクチンが厚生労働省に承認された。ワクチンを広く普及させ、大切な女性のからだを守るために、国は接種費用への支援を検討すべきだ。
子宮の入り口にできる子宮頸がんは二十〜三十代の女性に発生するがんの中で最も多い。わが国では毎年新たに一万五千人が子宮頸がんになり、三千五百人が亡くなっている。ほとんどが性的接触によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であることが分かっている。
全女性の七、八割は一度はHPVに感染し、そのうち一部が持続感染の状態になり、やがて子宮頸がんが発生する。HPVのうち16型と18型による感染が最も多く、子宮頸がん全体の六、七割、二十〜三十代では八、九割を占める。
承認されたワクチンは16、18型のHPVの感染予防を目的としており、感染前に接種すれば、がんの発生をほぼ完全に防ぐことが海外の臨床試験で確かめられ、既に百カ国以上で承認されている。
子宮頸がんは発見が遅れれば命にかかわるほか、助かっても子宮全摘が避けられず子供が産めなくなる。タレントの向井亜紀さんが米国人に代理出産を依頼し子供をもうけたのもこのためだ。
ワクチン接種でこうした悲劇を減らすことができるだけに、年末から国内で接種可能になるのをきっかけに広範に普及させたい。
問題は接種費用が三万〜四万円(三回接種)と高価なことだ。
だが、がんを予防できるワクチンとしては初めてで、長期的にみれば医療費が少なくて済むこともあって、英、独、仏など約三十カ国では接種費用を公費負担・補助している。ほとんどの国が十歳前後からの接種を推奨し、英国、オーストラリア、スウェーデンでは学校で接種している。
わが国でも日本産科婦人科学会などがHPVにほとんど未感染の十一〜十四歳への接種を推奨し、公的補助で接種率を高めることを提言している。民主党は衆院選に向けた政策集の中で、任意接種に対する「助成制度」の創設を掲げている。厚労省も諸外国並みの支援体制を目指すべきだ。
ワクチン接種とともに欠かせないのは定期的な検診だ。ワクチンだけではすべての子宮頸がんを予防できないからだ。わが国の検診率は24%で他の先進国の半分以下。ワクチン接種開始とともに検診率を向上させ、二重の体制で子宮頸がんを撲滅したい。
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